6月8日に行われた宇治の県神社の大幣神事(たいへいしんじ)。今年も見に行ってきました。
宇治の県神社では6月5日に県祭りが行われ、夜店が大いに賑わい、夜店が引き払った6日未明に「暗闇の奇祭」の異名を持つ梵天のぶんまわしが行われます。そして8日に行われるのが大幣神事です。その名の通り大人数名で担ぐ全長6mほどの大きな幣が出て、宇治の街を巡行して行きます。幣には3本の傘が差され、ここに八衢彦(やちまたひこ)、八衢姫(やちまたひめ)、久那斗(くなど)の三神が祀られているといいます。さらに大弊には松の枝も付けられており、街々の厄(疫神)が集まり清められるとされています。そしてクライマックスの場面では、大幣を一気に引きずって全力で県神社から宇治橋まで走り抜け、大幣を宇治橋の上から宇治川に投げ捨てます。このかなりユニークな行事は宇治市の無形民俗文化財にも登録されています。
大幣の行列には榊や風流傘が付き従い、さらに馬に乗った神人が一緒に進みます。神人は、顔を隠すかのように紙垂(しで)を被った特徴的な姿。さて、大幣は県神社を午前10時に出発して、県通りを宇治橋前へと進みます。宇治橋手前では短いですが神事があり、その後一行は宇治橋通りを進んで、宇治神社の御旅所前へと向かって行きます。途中、何カ所かで大幣の下端を地面にコンと付ける儀式も行われます。
また、大幣が通る時には別に幣が配られており、見物人が受け取っていきました。玄関先に備えておくと厄除けになるのだそうです。一行がしばらく進んで宇治神社御旅所までやって来ると、「馬馳せの儀(まばせのぎ)」があり、騎馬神人が御旅所前から一の坂と呼ばれる坂へと馬を4往復走らせます。この行事は中世からの儀式を伝えているとされ、今はアスファルトの道を走る馬も、その昔は歴史的な風景の中を走っていたのでしょう。
馬馳せの儀が終わると、大幣は本町通りを通って県神社へと戻ります。こうして宇治の街を一周して大幣を寄り代として厄を集めて来たわけです。県神社まで来るといよいよ神事もクライマックス。神社前の交差点で大幣が3周した後、一気に大幣を地面に落として宇治橋向かって引きずりながら全力で走り抜けます。なかなか衝撃的な光景です。
昨年は県神社付近から走りはじめる様子を見ましたが、今年は宇治橋で待ち構えて投げ捨てる場面を見ることができました。一気に走ってきた大幣の一行はあっという間に宇治橋から大幣を投げ捨てて神事終了。宇治川の荒波にもまれながら大幣は見えなくなっていきました。投げ捨てる場面は多少は手間取るかと思いきや、すぐに終わってしまったため、写真も動画も中途半端な状態となってしまいました。残念無念です。個性的な「大幣神事」、機会がありましたらご覧になってみて下さい。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。特技はお箏の演奏。