8月24日に、京都市左京区の久多で花笠踊が行われました。前回は上の宮神社から大川神社での様子をご紹介しました。今回は志古淵神社での様子です。
花笠踊についての詳細は前回のブログにまとめましたので、ご覧ください。志古淵神社は久多の中心的な神社で、上の宮神社から大川神社を経た一行は志古淵神社で花笠踊の奉納を行います。志古淵神社は滋賀県と京都市左京区の安曇川水系に沿って存在してる「シコブチ神」を祀る神社のひとつで、そのうち7つは「七シコブチ」と呼ばれ、久多の志古淵神社も「七シコブチ」のひとつに数えられています。
安曇川流域は古来から奈良や京の都へと建築用の木材を供給する地でしたが、伐り出した木材を筏(いかだ)に組み、川に流して運ぶ作業は山間部の川では危険を伴うものでした。その危険な仕事を無事に行えることを願って、川の魔物を取り除く神さまとして「シコブチ神」が、安曇川水系の人々の間で信仰されていきました。
いったい「シコブチ神」とはどのような神なのか。実は「シコブチ神」についての物語が伝わっています。以下、読売新聞の記事から引用してみます。「昔むかし、筏(いかだ)乗りのシコブチさんが、小さい息子を舳先(へさき)に乗せて川を下っていると、金山渕と中野の赤壁という大きな岩があるところで、2度もカッパに行く手を阻まれ、息子を川底へ引き込まれかけたんや。怒ったシコブチさんはカッパを懲らしめ、「筏師には2度と手を出さん」と誓わせたそうや。筏師はもうおらんが、しこぶちさんは川の中の悪もんを退治してくれる神さんとして、今もまつられてはる。(県小学校教育研究会国語部会編『滋賀のむかし話』より要約)」。
いかがでしょうか。シコブチさんは筏乗りだった人物で、子どもを川に引きずり込もうとしたカッパを懲らしめ、シコブチさん親子のみならず筏乗り全体に手を出さないと誓わせたところから、神様として祀られるようになったということのようです。山あいの川の流れは複雑で、かつては人を川へと引き込むカッパの存在が信じられていました。「シコブチ神」は、人びとの安全への思いが感じられる神様だと思います。
さて、志古淵神社では21時ころから花笠が集まって神事が行われます。上の宮神社と同じように社殿に花笠が並べられると、神職2名が社殿の正面に伏して何かを唱えている姿が印象的でした。神事が終わると、境内に設けられた櫓の周りで盆踊りが始まります。花笠の方々はしばらく休憩に入りました。
やがて本殿から花笠を下すと鳥居の外に並んでから、再び境内に入りなおして踊りが始められました。今年は例年よりも早い時間に始められたようです。拝殿には神職が花笠の男たちに向かって座し、花笠踊が神職や本殿に向かって奉納されました。暗闇に光る花笠、響く歌声。とても幻想的な光景です。ひとしきり踊ると、神職から挨拶があり、日頃の感謝とねぎらいの言葉が述べられていました。
踊りはこれで終わりではなく、引き続き櫓を囲んで丸く踊る、輪踊りへと移って行きました。事前の情報では日付が変わるまで踊り続けると聞いていたため覚悟をしていましたが、今年は22時半前には終了となりました。どうやら近年は日付を越えないことが多く、今年は早く始まったため早く終わってるとのことでした。祭りの形式も少しづつ変わってきているのかもしれません。予定よりは短かったとはいえ、十分に花笠踊を堪能させていただきました。地元の方がとても和気あいあいとしてたのが印象的で、またいつか見に来たいと思う行事でした。最後になりましたが、今回は車を出してくださった方にも心より感謝いたします。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。特技はお箏の演奏。