2年ぶりに八坂神社の初能奉納を見に行ってきました。八坂神社では、金剛流と観世流とによる初能の奉納が隔年交代で行われていて、2016年は観世流の順番です。演目は「翁」。五穀豊穣、国家安泰、天下泰平を祈願する儀式的な内容で、特にストーリー性もない演目のため、能の解説サイトでは「能にして能にあらず」と書かれています。この演目の起源は能の初期であるために格式が高く、新年や祝賀祭などで好んで演じられています。
「翁」の演目では、まず露払いの意味合いで千歳(せんざい)がさっそうと舞った後に、翁面をつけた能役者が舞い、続いて狂言役者が演じる三番叟(さんばそう)が登場して、勢いよく掛け声を発しながら舞台を駆け回り、その後、鈴を振りながら躍動的な舞を舞って行きます。能役者が演じる翁は、千歳(せんざい)が舞っている最中に舞台上で面を付ける点が、他の演目とは大きく異なっているそうです。
私もまだ能を間近で見た経験は数えるほどしかありませんが、人の声や演奏が作りだす、いわゆる幽玄(非常に趣が深い)の世界には毎回強くひきこまれるものがあります。一朝一夕の練習では作り出せない、この世界観が能の醍醐味なのでしょう。こうした素晴らしき伝統芸能が、もっと多くの人の目に触れてほしいと思います。
八坂神社の初能は正月3日の朝9時からですが、すでに1時間前には前の方の席は埋まってきて、直前にはもう能舞台の周りは満員です。実は、午後から「かるた始め式」もあるため、アマチュアカメラマンは早朝から最前列の席を確保されています。私は今年はご案内のため「かるた始め式」は見ていませんが、今年も多くの方で賑わっていたようです。今年の私は能だけでしたが、それでも十分に見ごたえがありました。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2016」監修。特技はお箏の演奏。