京都の数ある節分行事。有名な社寺では大規模な豆まきがあり、集まった大勢の方が押し合いへしあいして豆を奪い合う状況が発生します。それこそが節分の風物詩ともいえますが、一方で、怪我をする危険や、人が争う合うみにくさ、そしてお年寄りや体が不自由な方は参加しがたいという事実もあります。そんな一般的な豆まきはごめんだという方にお勧めしたいのが、知恩院の追儺式です。
追儺式は3日13時半から法然上人御堂で行われます。法然上人像の前で法要が行われ、御念仏が唱えられます。参列者の数もさほど多くはありません。法要が終わると、最初の豆まきが堂内で行われます。掛け声は「福は内~!ごもっとも~!ごもっとも~!」で、鬼は外とはいわないのも特徴。ユニークな掛け声ですね。撒くのは袋に入っていない豆なので、この豆は取るものではありません。そして豆まきが済むと、袋に入ったが豆が参列している一人一人に手渡されていきます。小さなお社ではこうしたパターンもありますが、大きな社寺で個別に手渡すというのは珍しい形式です。こうして奪い合うことなく参列者が余すところなく豆を手にできるため、お年寄りにも安心というわけです。
豆まきの一行は続いて阿弥陀堂に移動して、同様に豆をまきます。知恩院の追儺式では七不思議のひとつである「大杓子」が登場するのも特徴。重さは約30㎏もあるといいます。真田十勇士のひとりである三好清海入道が、大坂夏の陣の折りにこの杓子持って暴れまわったとも、ご飯をすくって振る舞ったともされます。節分の日は「すくう」にかけて、阿弥陀堂まで持ち出されます。これも非常にレアな場面でした。
阿弥陀堂からは境内の諸堂を回りながら、それぞれ「福は内~!ごもっとも~!ごもっとも~!」の掛け声で豆を撒いていきます。法然上人の御廟や勢至堂にも豆を撒いていました。そして階段を下りて、三門にもやって来て豆を撒きます。他のブログでは三門の上から撒いている写真も見かけましたが、少なくとも今年は三門の階段から撒いていて上には昇っていませんでした。一行は、境内で参拝者とすれ違うたびに豆を手渡していき、頂いた方は思いがけないことに笑顔になり感謝の言葉を口にしていました。他とは違い、穏やかに行われるのが知恩院の節分行事です。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2016」監修。特技はお箏の演奏。