台風10号が異例の進路をたどりながら、日本への上陸が濃厚となっています。
台風10号が異例の進路をたどっています。関東の南で発生して以降、日本の南西へと進んで非常に強い勢力に発達。さらに再び戻るように北東へと進んで、東日本に上陸してきそう。過去の台風経路を手元でいろいろと調べましたが、このようなコースは初めてと言ってよいでしょう。沖縄近海の海水温が平年よりも高いというのも災いしています。
今のところ「関東から東北、あるいは東海地方への接近・上陸」の線が最も確率が高そうで、さらにその先の進路は「北西」へと進んで日本海へと抜ける見込み。こうした上陸経路自体も大変珍しく、関東上陸では過去に1989年の台風13号の1例しかありません。この時は上陸時の気圧が970hPaほどでした。また静岡上陸でも1959年の台風7号のみで、その時は965hPaほどで上陸をしています。すなわち、今回の台風の進路は、過去65年でまだ2-3例目という非常に希なコースです。
ただ、今回は、勢力が「強い」見込みで、上陸時で950hPaほどを保っている可能性があり、大きな被害が起こる可能性があります。経路が特異で勢力も強いとなると、一般的な台風とは異なる場所で大雨が降り続いたり、これまでと異なる場所や向きから暴風が吹き荒れたりということが起こるでしょう。また、特異な経路というのは、それだけ予報をする方も経験がないということにもなりますので予報が難しく、予期せぬことが起こる可能性もあります。まだ予報円が大きいというのも、それだけ予想が難しいことを表しています。
また、台風が接近するエリアのみならず、台風から離れている西日本でも、同じような場所で大雨が続いて記録的な雨量となる恐れがあります。今回台風が特異な動きをする要因のひとつが、「寒冷渦(かんれいうず)」と呼ばれる上空の寒気の塊です。この寒冷渦は動きが遅く、西日本でも大気の状態が不安定となって大雨が発生しやすく、中小河川の氾濫や竜巻などの突風被害も発生する恐れがあります。こうした状況は28日に九州や中国地方からから発生し、徐々に東へと移ります。気象庁は26日の夕刻に、28日・29日の西日本の大雨について警戒を呼び掛ける情報を発表しました。30日以降は台風の進路によって流動的ですが、近畿地方まで大雨の範囲が移る恐れもあります。台風が直撃する地方のみならず、離れたところでも大きな影響が出そうというのが今回の特徴。台風10号の動きは、気象観測史においても経験がほとんどない特異な事象です。だからこそ予想が難しく、全国各地で警戒が必要です。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2016」監修。特技はお箏の演奏。