10月10日に、粟田神社の粟田祭の神幸祭があり、剣鉾の澄んだ音色が響きました。
粟田祭は千年の歴史を持つ祭りで、室町時代に祇園祭が催行できなかった年は粟田祭をもって祇園祭の代わりとしたとされるほどです。粟田神社のご祭神は祇園祭を行う八坂神社の神々と同じで、神社の由緒は下記のように伝わっています。平安時代の清和天皇の時、都に疫病が流行った際に、天皇の使いが八坂神社に7日間こもって国家と民の安全を祈祷すると、その7日目の夜、夢の中に老人が立ちました。その老人は「私はオオナムチ(大国主命)である。祇園の東北に牛頭天王にゆかりの地があるので、その地に私を祀れば、必ず国家と民衆は安全である。」と告げて消えました。
そうしたお告げから、粟田神社の社を整備して八坂神社の御祭神で牛頭天王と同一視されたスサノオとその妻・クシナダヒメ、お告げに現れたオオナムチを祀り、厄除けの神として信仰されるようになりました(牛頭天王は疫病を司ると信じられた)。また、粟田神社は八坂神社の旧名・祇園感神院と対応して、「感神院新宮」と呼ばれていました。このように、粟田祭が祇園祭の代わりとされることもあったのです。
さて、粟田祭は神幸祭に登場する剣鉾が知られています。剣鉾は高さが7m~8m、重さ40㎏~60kgで、重心が上にあるため持ちあげるのも非常に難しく、まさに名人芸。剣の下部には鐘が付いており、鉾を揺らすことで澄んだ音が響き渡ります。剣鉾は厄払いのための道具で、道筋を祓い清め悪霊を鎮める祭具。神輿に先立って進むことで、神輿の巡行路が清められていきます。
この日は秋らしく高い青空に筋雲が浮かび、剣鉾の輝きと澄んだ音がひと際鮮やかだったように感じます。都ホテルからの三条通は電線がなくて見晴らしもよく、剣鉾差しを見るにはよい場所です。また青蓮院の辺りはクスノキが枝を伸ばしているために、その合間を縫って鉾差しを行っていきます。剣鉾は瓜生石の周りでも音を響かせて引き返して行きました。次回は神輿の様子をご紹介します。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2016」監修。特技はお箏の演奏。