20日夜に、周山街道の小野郷にある岩戸落葉神社のライトアップが行われました。
京都市街地から西日本JRバスで周山行きに乗ると岩戸落葉神社のある小野郷に行くことができます。具体的には、高雄からさらに奥へといったところ。今は高雄経由のルートが普通ですが、古来は杉坂口から鷹峯を経て小野郷へと至る道が一般的でした。川端康成の「古都」の舞台としてもご存じの方もおられるでしょう。小野郷からは惟喬親王が晩年の余生を過ごしたとされる大森へと行くことができ、まさにその玄関口に、見る者を圧倒する大銀杏とともに岩戸落葉神社があります。なお、バス停は「小野郷」が最寄りです。小野郷口のように似たようなバス停があるためご注意下さい。
この神社は岩戸落葉神社の名の通り、境内を埋め尽くす銀杏の落ち葉で知られています。大銀杏の樹齢は400年とも言われていますが、京都市街地の大将軍神社(東天王社)にある樹齢800年の大銀杏よりもさらに大きいため、こちらの方が古いのでは?と思ってしまいます。神社は岩戸社と落葉社がそれぞれあり、総称として岩戸落葉神社と呼ばれています。
落葉社の由来は、延喜式の神名帳に載る「堕川(おちかわ)社」であるとする説がひとつ。堕川は落川で、小野郷がいくつもの川が合わさり流れゆく場所にあるためとされています。一方で、源氏物語に登場する落葉の宮が小野の郷に隠棲したからだとする説もあります。源氏物語では、柏木は朱雀帝の皇女である女三の宮に恋をしますが、女三の宮は源氏の正妻として迎えられてしまいます。そこで柏木は女三の宮の姉である女二の宮を妻として迎えるのですが、残念なことにあまり好きにはなれず、自分は「落葉」を拾ってしまったと和歌を書くのでした。
その後いろいろとあって、なんと女三の宮は柏木の子(薫)を懐妊!!しかも源氏に関係がバレてしまい、柏木は恐れるあまり次第に弱り、とうとう亡くなります。その間際、親友の夕霧に妻である落葉の宮のことを託し、物語は続いて行きます。夫である柏木を亡くした落葉の宮が隠棲したとされるのが、この小野郷。そこにあるのが岩戸落葉神社です。物語が先か地名が先かはわかりませんが、神社の創建が源氏物語説だとするならばとてもロマンチックですね。
大銀杏は4本あり、同じように見えて実は散るタイミングが違っています。境内奥側の銀杏は早く、道路に面した外側の銀杏は遅いのです。そのため境内には散ったイチョウが満ちているのに、写真ではまだ真っ黄色の銀杏が写せるというのも自然が見せてくれる絶妙な美しさ。この日は、早い銀杏は既に散り境内には黄色の落ち葉。そこにライトアップで輝くまだ散る前の銀杏が雄大な姿を見せてくれていました。
ライトアップは年に一日だけで、静かなライトアップというよりは、地元の方々が集まって盛り上がっています。それがまたとっても明るく元気よく、冷たい空気に包まれた山里の神社がとても暖かい雰囲気で満ちています。見ているこちらも笑顔になってしまいます。神社の前ではおぜんざいやフランクフルトなども100円で頂くことができ、冷えた体を温めてくれます。岩戸落葉神社へは、なかなか訪れる機会が少ないとは思いますが、圧倒される美しさがあります。機会がありましたら足を延ばして見てください。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2016」監修。特技はお箏の演奏。