紅葉が美しいことで知られる東福寺。紅葉シーズンのみ公開される塔頭がいくつかあります。今回は、その中から一華院をご紹介します。
紅葉シーズンの東福寺は、団体ツアー客も多く、大変な混雑となります。特にボトルネックとなっているのが、臥雲橋です。臥雲橋からは通天橋の周りに広がる素晴らしい紅葉の絶景を望めるため、多くの方が足を止め、どうしても混み合ってしまいます。一方、その臥雲橋のすぐそばにありながら、別世界のように静かな空間が広がっているのが、紅葉の時期だけ特別公開される一華院です(今シーズンは11月30日で公開終了)。
一華院は、臥雲橋の手前でお茶席とともに案内がされていますが、中に入る人はさほど多くはなく、拝観料はお抹茶と合わせて1200円。拝観のみは400円です。紅葉ピークの東福寺にあって、静かな空間は貴重です。一華院の庭は「依稀松(いきまつ)の庭」と呼ばれ、禅語から来た依稀松が中央にある緑の美しいお庭で、紅葉はほとんどありません。
しかし、東福寺へ紅葉を見に来ながら、あえて緑のお庭を楽しむというのもまた「通」かもしれませんね。「依稀松」は、龍によく似ているが龍ではない曲がった松のことだそう。一華院の「依稀松」は、細長くのびた枝が印象的で、曲がってはいませんが、一本だけ庭に生えるその姿がまた、龍のような強い個性を発揮しています。
庭の苔も美しく、遠くに聞こえる臥雲橋の賑わいを感じながら、優越感に浸ることもできるお庭かもしれません。喧騒を離れて、しばし一服のお茶を頂きながらお庭を眺め、「京都」らしい空間を過ごす。大混雑となる東福寺の中にあるオアシスのようなお寺です。例年、紅葉シーズンに公開されていますので、人混みに疲れてしまった方にもおすすめ。
今年は北側の庭園が重森千青(ちさお)氏によって作庭されました。北庭は「彷彿石庭(ほうふつせきてい)」と名付けられ、10月に完成したばかり。この秋が初公開でした。南の苔庭とは対照的に、枯山水で七五三の石組が拝され、四神の玄武をイメージして三尊石で亀を表し、5つの石の州浜は亀の甲羅を、また石の回りにはフキノトウを植え、亀に巻き付く蛇を表すこともできるそうです。普段は非公開ですが、いつかフキノトウの時期にも眺めてみたいと思うお庭でした。今年の公開は終りましたが、また来年以降、機会がありましたら足を延ばしてみてください。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2016」監修。特技はお箏の演奏。