松尾寺 西国三十三所観音霊場29番札所

松尾寺
2016年の10月になりますが、舞鶴市にある西国三十三所観音霊場29番札所の松尾寺(まつのおでら)を訪れました。

松尾寺松尾寺(まつのおでら)は、京都府の北部、舞鶴市の東部にある古寺で、青葉山の中腹に位置しています。青葉山は福井県との境にあたり、福井県側から眺めると双峰が並び立つ様子が望め、美しい山容から若狭富士とも呼ばれています。松尾寺はその青葉山の西側に位置しているのです。険しい山は古くから修験の道場となり、寺の創建は和同元(708)年に唐の僧、威光上人が馬頭観音を得て庵を結んだのが始まりとされています。

松尾寺平安時代の末期には、鳥羽天皇やその皇后である美福門院の帰依を受けて寺領4000石を賜り、寺坊は65を数えて繁栄をしたとされ、実際今に至るまで美福門院の念持仏とされる普賢延命菩薩像が伝来しています。その後、度重なる火災によって衰えますが、丹後を治めた細川幽斎や、京極家によって復興され、現在の本堂は江戸時代の享保15(1730)年に修築されたものが伝わっています。

松尾寺松尾寺は、西国三十三所観音霊場のひとつともなり、唯一の馬頭観音を本尊とする寺として厚い信仰を集めてきました。馬頭観音は、三十三の姿に変化をするとされる観世音菩薩の変化した姿のひとつで、頭上に馬頭を乗せ、逆立った炎髪と憤怒の形相をしているのが特徴です。馬が草を食べるように煩悩を食い尽くすとされ、死後の六道の世界では畜生道に堕ちた人々を救うとされますが、その姿から農耕の守り仏として、あるいは牛馬畜産、車馬交通、ひいては競馬にちなむ仏様として信仰をされています。また、馬は走るのが速い動物ですが、そこから転じて馬頭観音によるご利益は即効性があるといわれるのも面白いところでしょう。

松尾寺さて、松尾寺への道のりは比較的整備はされていますが、一部車線が狭い場所もあるため注意が必要です。寺までの道は心細いですが、境内に着くと福井県側からの参拝者も加わって、人影はある印象です。馬頭観音は秘仏のため直接拝むことはできませんが、本堂の中におられた地元の古老の方が、2008年から2009年の御開帳の時の話をしてくださいました。それ以前の御開帳は1931年で、2008年が77年ぶりの御開帳とあって、地域の誰も本当の仏様の姿を拝んだことがなかったそう。初めて見た姿には驚かれたそうです。また本堂は約300年の時を経て傷んでおり、修理をしたいが資金集めが大変だともお伺いしました。冬は雪も積もる厳しい地域で300年耐えてきたというのは、感嘆すべきことかもしれません。

松尾寺ちょうど訪れた時期は、秋の宝物殿の公開日に当たっていました。例年、春秋の2期間にそれぞれ1か月程度を目安に公開が行われています。今回寺務所で見学を申し出ると、わざわざ私一人のために宝物殿を開けてくださり、お寺の方が貴重な寺宝の数々を丁寧に解説してくださいました。

松尾寺重要文化財の仏像や、仁王像の修復のお話し、特別に展示をされていた終南山曼荼羅の絵解き、毎年5月8日に行われる国の重要無形民俗文化財の「仏舞」で使われる面やその伝承についてのお話など、現地でしか伺えないようなたいへん貴重なお話をお聞きすることができました。展示の内容は時期によって少しづつ変わるようで、また機会を得て訪れてみたいと思いました。巡礼の方以外はなかなか訪れる機会が少ないかもしれませんが、深い歴史と信仰を感じるお寺でした。

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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2017」監修。特技はお箏の演奏。

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