五山送り火 2017年

五山送り火 大文字
京都では8月16日に五山送り火(ござんのおくりび)が行われました。

五山送り火 大文字お盆の締めくくりに行われる五山送り火。正確には観光行事ではなく、お盆にお迎えをしたご先祖様の霊「お精霊(しょうらい)さん」が迷わず冥界へと戻れるようにと夜空に灯す祈りの炎です。庶民の信仰心から生まれ、長年受け継がれてきた京都の大切な伝統行事。今年は東山の「大文字」(以下「大」)を吉田山から眺めてきました。激しい雨が降り、たいへんな送り火となった昨年は、東山の「大」は火勢が強まらず、近くでも見えにくかったようですが、今年は天候にも恵まれ美しい炎を目にすることができました。

五山送り火 大文字五山の中でも最初に炎が灯されるのが東山の「大」で、20時の点火のあと、5分おきに「妙法」「船形」「左大文字」「鳥居形」と、各火床が灯っていきます。それぞれの送り火は、その炎が灯る山麓の集落の人々によって維持されています。そのため、極端にいえば本来は地元の方のためだけの炎ともいえます。それが京都の広範囲で見えるため、街中の人も、あるいは京都以外の人でも、その炎に先祖の霊を送る思いを込めることができているのです。

五山送り火 大文字そもそも送り火とは何か?お盆に家族の元へと帰ってきた精霊を送る「送り火」は、本来は各家々の門前でそれぞれが燃やすものでした。今でも行っておられる家もあることでしょう。また、左大文字を担っている法音寺周辺では、各家の門前に松明の篝火が焚かれます。こちらも各家の送り火が発展したものといえ、五山送り火は、この各家々の門前で焚かれていた送り火のより大きなものといえるでしょう。

五山送り火 大文字五山の送り火は仏教色の強い行事ではありますが、お盆の考え方自体が神道の祖霊信仰によるため、なかなか複雑です。いずれにしても宗派を問わず死者の霊は神や仏の元へと行く(あるいは神や仏になる)という考え方は共通していて、一般的に神や仏が住む世界は天上であると考えられてきました。すなわち、神や仏のいる場所により近い、高い山に炎を灯すことで、亡き先祖や家族を送るようになっていったと考えられています。事実、江戸時代の文献(寛文2年刊:案内者)には、庶民は鴨川の河原で松明(送り火)を上に放り投げて供養をしていたことが書かれています。

五山送り火 大文字また、点火順は現在は最も東にある「大」から最も西の「鳥居形」まで、極楽浄土に向かって順に西へと灯っていくとされますが、昭和30年代は「大」が最後に灯っていました。火床の数も時代ごとに異なっていたり、お盆以外にも灯されるなど、送り火の細かい方法は時代によって変化をしています。送り火の中に、今はなくなってしまった文字がありますが、やはり維持が大変だからに他なりません。各送り火は「保存会」を組織して、補助金を受けられるようになっていますが、それでも維持にはお金がかかります。また、真夏に松明を山へと運ぶのも大変な労力です。それ以前に参道の維持を常日頃からしておかなければ暗い中では足もとが危険ですし、遠くからよく見えるようにと草刈もしておられます。人手不足も問題になっているところがあると聞きます。灯る炎を見ながら、先祖や亡き家族への思いのみならず、守って下さっている方々への感謝の思いを持たずにはいられません。今後も永く受け継がれていってほしいと思います。

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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2017」監修。特技はお箏の演奏。

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