大覚寺の宵弘法は「嵯峨の送り火」とも呼ばれる行事で、大沢池に送り火が灯されて、五山の送り火で帰りそびれたお精霊(しょうらい)さんを送るといわれています。「宵弘法」は、弘法大師が除災招福を祈念して始めたと伝わり、毎年1回執り行なわれています。大覚寺は夕刻には無料公開され、大沢池には祭壇が設けられて、送り火を待つ方が集まります。
午後6時からは宸殿(しんでん)にて、北嵯峨高校吹奏楽部による演奏が行われています。親しみのあるポップな曲の演奏で、聴き応えがありました。人数が多いので迫力もあります。3年生が抜けて1・2年生のみでの演奏会はこれが初めてなのだそう。日ごろからたくさん練習をされているであろう迫力ある演奏。宸殿前の庭には席も設けられて、多くの方が聴き入っていました。
辺りがだんだんと暗くなり始める頃、大沢池には船で灯篭が浮かべられていきます。この時期、大沢池の北東方面には蓮が群生して茂っていますので、実質的な池の大きさはいつもより小さくなっています。灯篭は池の中に設けられた祭壇や送り火の周りに浮かびますが、風に流されて、池の奥へと流れていきます。
午後7時から嵯峨の送り火の法要が始まります。この法要は施餓鬼会(せがきえ)で、京都各地でお盆前後の時期に行われる法要です。施餓鬼は「餓鬼に施す」と書きます。餓鬼道は死後に生まれ変わる六つの世界の一つで、全ての食べ物が炎になって燃えてしまうため、常に空腹に苛まれるという非常に厳しい世界です。中国仏教では、旧暦7月に僧侶を手厚くもてなすと餓鬼道に落ちた亡者が救われるとされ、純粋な仏教行事としてお盆の時期に施餓鬼会が行われています。
さて、法要が始まると、大沢池の中に設けられた送り火に、船から火が灯されます。見る見るうちに大きくなった炎が、勢いよく火の粉を舞い上げ、その光は水面にも反射して辺りは一気に明るさを増します。まさに先祖を残らず送る炎にふさわしい、勇壮さを感じられるでしょう。
法要が終わると、人も少なくなってきて、自由に辺りを動けるようになります。送り火はまだ燃え続けていますので、思い思いの構図で写真を撮る方もたくさんいました。境内の御影堂前の石舞台では、灯明も献じられています。こちらも幻想的な明かりで、お盆の終わりを思わせてくれました。
夜の大覚寺は何度訪れても、独特な雰囲気があると感じます。仏像や襖絵、建物、信仰においても見るべきものが多く、時代劇ネタも含め、ガイドも案内する話に全く困ることのないお寺です。また今年は10月初めに「観月の夕べ」に際して夜間拝観も行われます。天候に恵まれて、見事な月を望めるとよいですね。宵弘法の様子は写真だけではお伝えできませんので、是非動画でもご覧ください。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2017」監修。特技はお箏の演奏。