南山城の秘境 鷲峰山金胎寺

金胎寺 多宝塔
先日、南山城最高峰の鷲峰山(じゅぶせん)にある金胎寺(こんたいじ)を訪ねてきました。

金胎寺へ向かう途中の茶畑山が多い南山城エリア。その最高峰が鷲峰山で標高は682mあります。その山頂付近にあるのが金胎寺です。場所は和束町(わづかちょう)の山間部で、和束と宇治田原を結ぶ府道62号線から分岐した道で向かうことができ、道路の一部が広くなった駐車場から10分弱歩いて寺にたどり着きます。和束町は茶どころとあって、金胎寺への道の途中にも美しい茶畑がありました。

金胎寺金胎寺は、天武天皇の白鳳4(675)年9月、役小角(役行者)によって開かれたといわれ、その後、養老6(722)年に白山を開山したことでも知られる泰澄(たいちょう)が再興したと伝わります。さらに聖武天皇によって奈良の平城京を守る寺として整備され、吉野の大峯山に対し「北大峯」と呼ばれ、中世の絵図には58もの堂塔が描かれるほど栄えました。しかし、鎌倉時代の末期の1331年、幕府と敵対した後醍醐天皇が笠置山の笠置寺に入る前に一時金胎寺に入ったため、鎌倉幕府によって寺は焼き払われ、さらに9年後の火災もあって徐々に衰退。現在では山頂に多宝塔と宝筐印塔(いずれも重文)を中心としたわずかな堂宇を残すのみとなっています。土日には管理するお坊さんが登ってくるそうですが、基本的には無住の寺です。

金胎寺創建譚が事実かは別として、役行者や泰澄の名前や寺の立地からもわかるように、金胎寺は修験の寺として古くから信仰を集めてきました。今回は行っていませんが、今でも金胎寺には行場があり、他のブログなどを参照すると各地の行場を巡った熟練の方でも恐怖を感じる場所があるそう。興味本位では行かないほうがよく、きちんとした熟練者と一緒に立ち入るほうがよさそうです。

和束町の眺め和束町には金胎寺にまつわる「空鉢の峰(くはちのみね)」という伝承が伝わっています。和束町の昔話を紹介するアニメーションがYouTubeに公開されていますので、ご覧いただくとわかりやすいと思います。泰澄が金胎寺に入った時のこと、あるとき泰澄が空の鉄鉢を峰の上から投げたところ、里まで下りていき、しばらくするとまた泰澄のもとに鉄鉢が戻ってきたときには、湯気の立ったご飯が山盛りで入っていたとの伝承。なかなか面白い話です。和束のむかし話シリーズのアニメは全部見ましたが、「継子(ままこ)と地蔵」の石地蔵さんお話は大好きです。

金胎寺 多宝塔さて、金胎寺の山門をくぐらず、さらに上に登った場所には重要文化財の多宝塔があります。建立は永仁6(1298)年であることが江戸時代の銘文から知られ、3間4面こけら葺きの美しい佇まいです。700年以上前の建物がこうして山中に残っているというのも感動的ですね。さらにそこから鷲峰山の山頂を目指して山道を登っていくことができます。勾配はありますが、歩いて10分~15分で到着できるでしょうか。

金胎寺 宝篋印塔山頂には正安2(1300)年の銘がある石造りの宝篋印塔が建っています。この場所が南山城最高峰の682m。駐車場からは約70mの標高差ですが、頑張って登ってきたかいがありました。山頂からは眺望は望めませんのでご注意を。なお、今年の京都検定1級の公開テーマ問題は「京都の塔」。南山城には、海住山寺の国宝の五重塔、浄瑠璃寺の国宝の三重塔をはじめ、岩船寺の重文の三重塔、そして金胎寺の重文の多宝塔と、素晴らしい塔が点在しており要チェックではないかと思います。宝篋印塔のような石塔も入れると範囲が広くなり、勉強が難しくなりそうです。話がそれましたが、金胎寺は南山城の秘境ともいえる立地です。訪れてみようという方は、大雨時や対向車には十分注意しながら道を進んでみてください。

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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2017」監修。特技はお箏の演奏。

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