貴重な設備で観測を続ける花山天文台

花山天文台
9月30日まで「京の夏の旅」で公開されている花山天文台を訪れました。

花山天文台京都の東、山科盆地の西の花山(かざん)にある花山天文台(かざんてんもんだい)は、昭和4年に日本で2番目に設立された大学天文台で、京都大学大学院理学研究科附属の観測所のひとつとして現役です。歴史的な価値が高い一方で、現在も天文学の研究の場として観測が続けられています。直径9mのドームがある「本館」には、国内3番目の大きさの口径45cmの屈折望遠鏡があり9月30日まで公開されています。公開期間中のアクセスは、タクシーか定期観光バスなどのツアーのほか、地下鉄東山駅の1番出口からシャトルバスも出ています。自家用車はご遠慮くださいとなっています。

花山天文台天文台までは東山ドライブウェイで行きますが、蹴上からの道は昭和2年に天文台への自動車道として陸軍の工兵隊が訓練も兼ねて開削したものです(花山道路)。花山山は、饅頭型をした山で東西南北の見通しがよく、天文台を作るには適した土地でした。海抜は221mあり三角点も設置されています。まさにその傍らに天文台は位置しています。西には清水山があるため京都盆地の光は遮蔽されやすいものの、山科盆地側は大きく開けているため、山科の人口が増えた現在は、昔に比べると観測しにくくなっているそうです。

花山天文台からの山科今回の特別公開では、本館の内部が公開され、口径45cmの屈折望遠鏡を目にすることができます。多くの部分が手動という、昔の方々の知恵が詰め込まれた望遠鏡だと感じました。こうした古い望遠鏡が現役で使われているのは、世界でもほとんど例がないそうです。興味深いのが、望遠鏡の動力は鉄のおもりを吊るしてその重力を使っていること。おもりが下に下がれば、また巻き上げる必要があるそうで、なかなかの重労働のようです。第3代花山天文台長を務めた宮本正太郎は、1955年より定年で退職する1976年に至るまで20年以上もの間、花山天文台で火星の観測を行い、火星の大気に地球と同じような偏東風があることを発見しています。お正月も休まず観測を続けたのだそう。

花山天文台 歴史館本館の天体望遠鏡のある3階からは、外へ出て建物の外側を一周することができます。山科盆地や京都盆地の南側、遠くは大阪方面も確認できました。晴れた日には気持ちの良い眺めを楽しめます。本館のほかには、開設当初に建てられた「歴史館」(旧子午線(しごせん)館)を見学できます。建物は大正から昭和の洋式木造建築として貴重なもので、天体観測資料などが展示されています。また、内部は非公開ですが、隣にあるもうひとつの望遠鏡ドームでは、太陽の観測が日々行われているそうです。このように、天文や科学に興味のある方でなくとも、なかなか面白い場所ではないでしょうか。

花山天文台京都大学理学研究科附属の天文台は、他にも飛騨天文台、岡山天文台(仮称、建設中)があるそうですが、近年の大学予算削減の影響を受け、維持管理さえも難しい状況にあるそう。実は花山天文台は存続が危ぶまれ、民間からの金銭的な支援も広く呼びかけられています。今回の夏の旅での公開も、入場料収入の一部を維持運営費に充てるためだそうです。夏の旅の公開は9月30日までですが、単発のイベントでの公開もありますので、興味のある方はぜひ一度訪れてみてください。

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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2017」監修。特技はお箏の演奏。

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