今年は10月4日が中秋の名月でした。例年よりも遅い月見となりましたが、金木犀の香りもする中でのお月見もよいものです。4日は平日だったため、土曜日の7日に観月の行事を行った場所もありました。神泉苑でも7日に観月会が行われ、優雅な龍頭舟に乗ることもできました。
神泉苑は平安京造営時に設けられた天皇の禁苑、すなわちプライベートのお庭で、どんな日照りの時にも湧き出る水が枯れることがなかったところから、神聖なる泉の苑池、神泉苑と呼ばれました。そのため、神泉苑は雨乞いの地ともなり、空海と守敏の雨乞い対決や、神泉苑で雨乞いの舞を舞った静御前と源義経の出会い(見初められたのはその後の「住吉での雨乞い」との話も)など、様々な伝説も生んでいます。現在の神泉苑は、二条城のお堀の造営に伴って縮小され、二条城の南にその名残の池が残されています。
観月会では、午後6時からの法要のあと、池に浮かぶ龍頭舟に乗船してお抹茶をいただいたり、善女龍王社の拝殿にて音楽舞踊の奉納が行われます。特に龍頭舟は人気で例年早々に舟券が完売してしまいます。ということで、今年も舟はあきらめて月が昇る頃に訪れてみました。中秋の名月から3日後は「居待月(いまちづき)」とも呼ばれ、日に日に遅くなる月の出を座って待つ月とされます。前日は立待月ですので、立って待つには長すぎるということですね。翌日は寝待月となり、寝て待つ月になります。今年は音楽舞踊の奉納には間に合いませんでしたが、美しい月が昇る様子を目にすることができました。来年もまた眺めてみたいと思う光景でした。
観月会では普段は入れない、神泉苑の北側のお庭も特別公開されます。除夜の鐘の時にも入れるエリアで、人知れず鐘楼もあります。神泉苑は、正面の鳥居と善女龍王社が目立ちますが、現在は東寺が管理をしている「お寺」です。本尊は、聖観音菩薩・不動明王・弘法大師の各お像で、観月会の時には本堂の扉が開けられて姿を目にすることもできますので、こちらにもご参拝を。名月だけではなく、普段とは違った一面を知れる神泉苑の観月会。機会がありましたら、ご覧になってみてください。
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吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2018」監修。特技はお箏の演奏。