1月31日の夜に皆既月食があり、日本各地で赤銅色(しゃくどういろ)の月が望めましたが、残念ながら京都は皆既食の頃には月が見えなくなってしまいました。
数年に一度、チャンスがある皆既月食。今回は1時間以上も皆既食が続くという好条件でした。当初は西日本は全般に曇り模様の予想でしたが、予想よりも雲の広がりが遅く、ご覧いただけた地域も多かったようです。ただ、京都では月が欠けていく段階は望めましたが、いよいよ月が皆既食に入ると、赤銅色の月は雲に隠されてほとんど見えなくなってしまいました。
私は、過去に京都タワーと二条城、神泉苑で皆既月食の写真を撮ってきたので、今回は八坂の塔へと出かけてみました。10名ほどの方が集まってその時を待っていましたが、月が見えなくなってしまったのはとても残念でした。皆既月食では月は完全に真っ暗にはならず、地球の大気で屈折した光が月を照らすために、月全体が赤っぽくなります。ただ、欠けて行く最中はまだ残っている月の光が強く目に届くため、欠けた部分は暗く見えます。今回はなんとか欠けていく段階までは見えていただけに、残念な気持ちも大きかったです。
皆既食の「皆既」という言葉は「みなつきる(皆尽きる)」という意味で、「既」という漢字には「ごちそうをおくび(ゲップ)が出るまですっかり食べてしまう様」という成りたちがあります。日食・月食の「食」の通り「全て食べつくす」という意味とも取れる「皆既」の言葉。古代の人たちは、欠けて行く様子にさぞ驚き、人知を超えた何かが月や太陽を食べると考えたのかもしれません。
そのことを思えば、今回は月が皆既食に入るとまさに「消えて」しまったため、古の人たちもこうした状況に恐れを抱いたのかもしれないとも感じました。平安時代でも、日食や月食は事前にある程度その発生が予想ができていましたが、月食や日食は不吉な出来事とされ、むしろ見ないように室内に籠ってやりすごすものでした。昨晩は、今後雲が取れる可能性は低いと判断し、早々に撤収。シャッタースピードを長くしてみましたが、ぼんやり写すのがやっとでした。またいずれ、八坂の塔と赤銅色の月も望んでみたいと思います。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2018」監修。特技はお箏の演奏。