朝日山は、以前にご紹介をした大吉山(仏徳山)や興聖寺から行ける標高145mの山です。平等院とは宇治川を挟んで対岸にあり、平等院の山号は朝日山でもあります。古くから和歌にも詠まれ、万葉集に載る挽歌(弔いの歌)「妹らがり 今木の嶺に 茂り立つ 夫松の木は 古人見けむ」の中の「今木の嶺」の候補地ともされています。頂上には朝日山観音堂があり、大切に管理をされておられます。
また、応神天皇の皇子である菟道稚郎子(うじのわきいらつこ)の墓もあります。日本書紀などの伝承では、その聡明さから兄を飛ばして応神天皇の皇太子となりますが、天皇の死後、兄の大山守命が皇位を得るため、莵道稚郎子は討たれそうになります。しかし、もうひとりの兄・大鷦鷯尊(おおさざきのみこと)と協力した莵道稚郎子らによって、結局大山守命は敗れ、命を落とします。その後、大鷦鷯尊と菟道稚郎子はお互いに皇位を譲り合い、3年間もの皇位空白期間が生じてしまいました。そのことを憂いた莵道稚郎子は、大鷦鷯尊に位を譲るため、なんと自ら命を絶ってしまったと伝わります。即位をした大鷦鷯尊は仁徳天皇となりました。
菟道稚郎子の墓は、宮内庁管理の御陵として京阪宇治駅の近くにありますが、もともとは円墳だったものを、明治22(1889)年に当時の宮内省が墓と定めて堀をこしらえ、前方部をつけ足して長さ約80mの前方後円墳に築き上げたものです。一方で朝日山の墓も、墓碑が建つのみで考古学的な裏付けはありません。墓碑は江戸時代の終わりに建てられたもののようです。宮内庁管理の墓のもとの円墳も、菟道稚郎子の時代よりは新しく、両者とも信憑性は低いですが、その物語を偲ぶにはよい場所です。
朝日山からは宇治の眺望も望めますので、山道を登って来た疲れを癒してくれることでしょう。朝日山の山号を持つ、平等院の鳳凰堂がちゃんと正面に見えるのは、なるほどと思わされます。大吉山とともに地元の方の散策路にもなっていますので、お時間のある方は足を延ばしてみてもよいでしょう。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。第14回京都検定1級(合格率2.2%)に最高得点で合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2018」監修。特技はお箏の演奏。