復活した琵琶湖疏水の船

琵琶湖疏水
この春、琵琶湖疏水の通船事業が復活し、観光船が大津と京都の蹴上を結んでいます。先日、上り下りのそれぞれのルートに乗ってきました。

琵琶湖疏水琵琶湖疏水は、琵琶湖と京都を結ぶ水路で、明治時代に入り活気を失いつつあった京都の復興政策として明治18(1885)年に着工され、5年後の明治23(1890)年に完成しました。工事責任者は若き技術者であった田邊朔郎(たなべさくろう)。京都府知事は北垣国道(きたがきくにみち)でした。疏水は、人や物資の運送を主目的とし、水力発電によって電気による動力で市電を走らせたり、防火目的等でも使われています。明治45(1912)年の第2疏水開通後は、京都市民の水道水として重要な役割を果たしています。

琵琶湖疏水通船かつて疏水は多くの人々が船で行き交い、最盛期には年間13万人ほどが利用するようになりましたが、明治末から大正初期に京阪電車が開通したことで利用者が減り、昭和の戦後には物資の運送も停止して役目を終えました。長らく疏水の船は失われていましたが、近年、復活に向けた行政の動きもあり、ついにこの春、観光資源として本格的な船の運行が始まりました。復活には様々なご苦労があったそうですが、実際に乗ってみて、その面白さに感動させていただきました。

琵琶湖疏水船は蹴上から大津へと向かう上りと、大津から蹴上へと向かう下りとがあり、料金は同じですが、時間が異なっています。なんと、水の流れに逆らう蹴上→大津のほうが所要約35分と速いのが特徴。これは水の流れに逆らって舵をとるために、ある程度のスピードが必要だからだそうです。大津→蹴上は約55分の乗船時間となります。料金は期間によって異なり、桜・紅葉のトップ期は片道8000円、通常期の土日祝は5000円、平日は4000円。下りの場合のみ午前中に山科で乗り降りできる便があります。事前予約制で、春の運行はすでに終了し、次回秋の運行は10月・11月で、予約の受付けは8月13日からとなってます。船の席は、複数名の場合は近くする配慮はしていただけますが、基本的には予約順で決まります。

琵琶湖疏水さて、今回は上りと下りの両方に乗ってきました。それぞれスピードや演出が違い、どちらがおすすめとは言い難く、好みが分かれるでしょう。できれば両方乗っていただくことをお勧めします。やはりトンネルの中に入って行くのは感動的。トンネルの入り口には、明治の元勲たちが揮ごうした書をもとにした扁額が掲げられており、水が入る上流側が陰刻、下流側は陽刻となっています。トンネル内は一気に空気が冷たくなるため、上着などがあるとよいかもしれません。船でもブランケットは用意して下さっています。

琵琶湖疏水変化する風景のみならず、ガイドさんの軽快な解説も付き、琵琶湖疏水の歴史や見どころがよくわかります。道中では岸辺の方々が手を振ってくれることもあり、乗っている方も非日常の気持ちになれるでしょう。やはり桜が咲いていればさぞ美しいと思いますが、どうしてもその年の気候によって前後がありますので、運もいるでしょう。

琵琶湖疏水 疏水の滝疏水の第一トンネルは全長約2.4㎞の長大なトンネルで、明治初期には大変な難工事でした。途中から二つの竪坑を掘って、そこから横に掘り進める工法が採られています。現在も竪坑は残っていますが、特に第1竪坑から疏水の中には、はるか上の地上の光が差し込んでいます。さらに途中から涌き出た水が、滝のように流れ落ちています。通称「疏水の滝」と呼ばれていました。たいへん神秘的な光景で、感動間違いなしの場面でしょう。一瞬で通り過ぎてしまいますので、特に写真を撮るのは至難の業かもしれません。動画が推奨です。

琵琶湖疏水 トンネル内の文字また、第1トンネル内壁にも、この船に乗らなければ絶対に見られない、北垣国道知事による「寶祚無窮(ほうそむきゅう)」の文字が刻まれています。「皇位は永遠である」という意味だそう。こちらも一瞬で通り過ぎます。滝やトンネル内の揮ごうは、大津→蹴上のコースのほうが、速度がゆっくりで少し見やすいかもしれません。

旧九条山ポンプ室他にも片山東熊が設計した、レンガ造りが美しい旧九条山ポンプ室の外観や、トンネルの出入り口の扁額やトンネルの形状の違い、阪神淡路大震災の後に設けられという緊急遮断ゲート、大津の第一トンネル入り口の扉や刻まれているレリーフなど、様々な見どころがあります。いずれもガイドさんが解説をしてくださいますので、きっと新たな発見があることでしょう。春の運行は終了しましたが、秋の運行が8月13日から受付されますので、ぜひ一度は乗船をしてみてください。なお、船からの様子は動画でもご覧ください。


 

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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

第14回京都検定1級(合格率2.2%)に最高得点で合格。気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2018」監修。特技はお箏の演奏。

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