醍醐寺は、理源大師・聖宝(しょうぼう)によって創建された真言宗醍醐派の総本山で、歴代座主が入った三宝院は門跡寺院として高い格式を誇ります。応仁の乱によって衰えた醍醐寺ですが、桃山時代の座主・義演(ぎえん)と豊臣家によって諸堂が復興されました。三宝院には、当時秀吉が基本設計をして造らせたという見事な庭園が伝わり、国の特別史跡・特別名勝に指定されています。この両方を兼ね備えた庭園は、全国で9カ所、京都では金閣寺と銀閣寺の庭園に加え、三宝院庭園の3カ所のみとなっています。
醍醐寺の正月三が日特別拝観では、伽藍エリアの無料公開に加え、通常非公開の三宝院の本堂・奥宸殿・純浄観が1000円で特別に公開されました。霊宝館は閉館しています。本堂には、快慶の傑作として全国的にも名高い弥勒菩薩座像がお祀りされており、新年早々、人がまばらなお堂の中で静かに手を合わせることができました。また、本堂と純浄観の間には、苔と白砂だけで瓢箪徳利、盃等を表した「酒づくし」の庭があります。
純浄観は、秀吉が催した「醍醐の花見」の際に設けられた八つの茶屋のうち最も大きい建物を移築したものという貴重な建築物。重要文化財である一方で、内部では平成に入って浜田泰介画伯によって描かれた美しい桜と紅葉の襖絵を見学できます。さらに、秀吉が基本設計をしたという立派な庭園が普段とは違った角度から望め、天下の名石・藤戸石の形も変化して興味深いものがあります。茶室の枕流亭もより近い場所で目にすることができました。また、庭の奥にある三段の滝も、場所によってはその様子がよく分かります三段の滝は、東山にある無鄰菴庭園内の滝のモデルにもなっています。
純浄観の下には庭園の池が水路のように入り込んで、奥宸殿の前まで苑池が続いています。かつては奥宸殿の前に舟入があり、船を浮かべて純浄観の下をくぐったのだとか。なんともダイナミックな演出です。水路の奥には茶室の松月亭があり趣を添えています。奥宸殿の内部には、修学院離宮の霞棚、桂離宮の桂棚と並ぶ天下の三名棚のひとつ「醍醐棚」があり、間近で目にすることができます。いずれも見応えがある三宝院の特別拝観。正月三が日の公開は、毎年行われているわけではないとのことでしたが、機会がありましたら訪れてみてください。
なお、昨年の台風で大きな被害が出た場所のひとつが醍醐寺です。仁王門の奥は木々がほとんどなくなってしまうという、衝撃的な光景が広がっています。本当にたいへんな状況です。三宝院は太閤しだれ桜の太い枝が折れてしまい、樹形が変わってしまいました。木そのものは生きていますので、今年も花を咲かせる姿を愛でることができればと思います。
「京ごよみ手帳2019」訂正のお知らせ
・P39の三十三間堂「楊枝のお加持と大的大会」の日程が1月14日となっていますが、正しくは「1月13日」です。
・P225の「京都御所」のデータで、2番の休みは「月曜(祝日の場合は翌日)・年末年始・臨時休あり」です。
ご迷惑をおかけいたします。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
第14回京都検定1級(合格率2.2%)に最高得点で合格。気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。8年ぶりに受験した第13回京都検定で再度1級に合格し「京都検定マイスター」となる。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳」監修。特技はお箏の演奏。