9月29日に、瀧尾神社(滝尾神社)の神幸祭があり、男女の神輿が出る神幸列が泉涌寺に進みました。
瀧尾神社は、東福寺駅の北、伏見街道(本町通)に面した神社です。詳しい創立年代は不明ですが、「源平盛衰記」に神社の旧名が見え、平安時代や遅くとも鎌倉時代には成立したと考えられています。現在地には、豊臣秀吉が方広寺大仏殿を建立したのに伴い遷座し、江戸時代には京都と伏見を結ぶ街道沿いの神社として信仰されました。
1717年にのちの大丸百貨店となる呉服店を伏見に創業した下村彦右衛門正啓は、京都への行商の途中にあった瀧尾神社を篤く信仰して、商売の成功をおさめ、以後神社は下村家代々の支援を受けました。江戸時代後期の天保年間には現在の社殿が下村家の援助で造営され、九山新太郎による見事な彫刻が施されています。特に、拝殿の龍は祇園祭の大船鉾との繋がりで話題にもなりました。本殿は貴船神社の奥宮の旧殿を移築改造しています。また、2000年には皇室が代々子授け祈願をした三嶋神社の拝所が移されています。
さて、瀧尾神社の神幸祭が今年は9月30日に行われました。現在の宮司さんの交流範囲が広く、各方面からの奉納行事があるのが特徴。その出し物は年によって変わることがあります。例年であれば、京都ではなかなか見られない中国の伝統芸能の「龍舞」が名物でしたが、今年は奉納がなく、剣鉾も雨の予報とあって出ませんでした。そのかわり立命館大学の学生による太鼓の奉納や、江戸の火消しが手にしたことで知られる「纏持ち(まといもち)」が参加して、神幸列に華を添えています。神輿は男性が担ぐ神輿だけでなく、女神輿があるのも珍しいです。
午後から神社を出発した神幸列は泉涌寺へと進みますが、今年は女神輿の台車が壊れたそうで、坂道も担いで登っていきました。暑い日でしたが関係者の皆様は本当にお疲れ様でした。神輿は泉涌寺の境内に入り仏殿の前に鎮座すると、僧侶による読経が行われました。さらに、太鼓や纏(まとい)の奉納も行われ、神輿の担ぎ手や僧侶も見守りました。泉涌寺は皇室ゆかりの由緒あるお寺ですが、近年こうした行事も行われています。瀧尾神社の交流の深さも感じる神幸祭。機会がありましたら、ぜひ現地でご覧になってみてください。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
第15回・第14回京都検定1級(合格率2.2%)に2年連続の最高得点で合格。気象予報士として10年以上。京都検定マイスター。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳」監修。特技はお箏の演奏。