南山城の蟹満寺を訪れました。
蟹満寺という寺名は、神(カム)と織物を意味する幡(ハタ)からなる、地名の蟹幡(かむはた)郷に由来するといいます。一帯は渡来系民族で織物にたずさわる人々(秦氏か)が住んだとされ、飛鳥時代末期に国家かそれに準ずる豪族(一説には秦河勝の弟の和賀)によって建てられたとみられています。平安時代以降は、今昔物語集に載る「蟹の恩返し」縁起で有名になりました。
現在の本尊である国宝の釈迦如来坐像(像高2.403mまたは2.5037m、重さ2172kgの金銅製)の造立は奈良時代以前と考えられ、同様の初期の丈六金銅仏(丈六=4.8m、坐像は2.4m)は飛鳥大仏、興福寺(旧山田寺)仏頭、薬師寺の薬師如来坐像のみとたいへん貴重です。一地方寺院で丈六の金堂仏を造るのは容易ではないため、長年、蟹満寺本来の仏像か、他の大寺院から移されたのかについて論争があり(蟹満寺論争)、近年は発掘調査による見解の入れ替わりもあるなど、その結論は出ていません。
蟹満寺は大きなお寺ではありませんが、その貴重な仏像を間近で拝することができ、蟹の恩返しの伝説を含め、いにしえに思いを馳せることができます。いまは黒い姿の本尊も当初は金色に輝いていました。アクセスはお車の他、JR棚倉駅から歩いて行くこともできますので、機会がありましたら足を伸ばしてみてください。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
京都検定1級に3年連続最高得点で合格(第14回~第16回、第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として10年以上。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2020」監修。特技はお箏の演奏。