10月3日に、「ニュイ・ブランシュKYOTO」の一環で、無鄰菴の夜間公開がありました。
無鄰菴は明治27年から29年にかけて、明治・大正期に活躍した山県有朋の別荘として造営されました。東山を借景として、開通したばかりの琵琶湖疏水の水を取り入れ、三段の滝や池、洋風に芝生も配された池泉回遊式庭園です。庭園は七代目・小川治兵衛が作庭し、三角形の庭の敷地を感じさせないのは何度訪れても不思議です。
建物も木像の母屋と茶室に加え、洋館があります。明治36年に山県有朋・伊藤博文・桂太郎・小村寿太郎らがここに集まって、日露戦争開戦直前の外交方針を決める「無鄰菴会議」が行われました。洋館には狩野派の見事な障壁画の部屋もあり、和様が合わさった明治の雰囲気を感じることが出来ます。
現在、無鄰菴の公開は事前予約制となっており、ホームページからの申込が必要です。詳細は無鄰菴のホームページをご確認下さい。さて、「ニュイ・ブランシュ」は、パリで毎年10月の第一土曜日に開催されている、一夜限りの現代アートの祭典です。京都ではパリと姉妹都市を結んでいることもあり、2011年より「ニュイ・ブランシュKYOTO」が開催されています。市内各所で、多彩な現代アートが展示され、イベントも行われています。一夜限りというのがもったいないほどの規模で、どこへ行こうか迷うことでしょう。
今回は、無鄰菴と京都市美術館の夜間公開を訪れてきました。無鄰菴は昼間と同じく事前予約制でしたが、その分、母屋に上がれる人数は少なく、ゆったりと時間を過ごすことができました。母屋からは、柔らかい明かりで照らされる庭園やわずかに望む東山、水の音も楽しむことができます。今回は母屋の二階にも上がれ、高い視点でも眺めることができました。
無鄰菴では、新進気鋭の現代アーティストだという、Hicham Berrada(イシャム・ベラダ)氏の映像作品が展示されていました。その作品は、鉱物が水中で織りなす景色を映像で記録したものだそうで、流体の中で無数の微粒子が動く様や、結晶が伸びていく様子が印象的でした。洋館の内部では大きなスクリーンで展示されており、建物のレンガ造りの内観とあわさって、独特の幻想的な光景を見せていました。よい空間を堪能させていただきました。
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吉村 晋弥(よしむら しんや)
京都検定1級に3年連続最高得点で合格(第14回~第16回、第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として10年以上。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2020」監修。特技はお箏の演奏。