粟田神社では、粟田祭の御神霊渡御祭が10月11日に行われました。
粟田祭は千年の歴史を持つ祭りで、室町時代に祇園祭が催行できなかった年は粟田祭をもって祇園祭の代わりとしたとされるほどです。粟田神社のご祭神は祇園祭を行う八坂神社の神々と同じで、神社の由緒は下記のように伝わっています。平安時代の清和天皇の時、都に疫病が流行った際に、天皇の使いが八坂神社に7日間こもって国家と民の安全を祈祷すると、その7日目の夜、夢の中に老人が立ちました。その老人は「私はオオナムチ(大国主命)である。祇園の東北に牛頭天王にゆかりの地があるので、その地に私を祀れば、必ず国家と民衆は安全である。」と告げて消えました。
そうしたお告げから、粟田神社の社を整備して八坂神社の御祭神で牛頭天王と同一視されたスサノオとその妻・クシナダヒメ、お告げに現れたオオナムチを祀り、厄除けの神として信仰されるようになりました(牛頭天王は疫病を司ると信じられた)。また、粟田神社は八坂神社の旧名・祇園感神院と対応して、「感神院新宮」と呼ばれていました。このように、粟田祭が祇園祭の代わりとされることもあったのです。
しかし、今年は新型コロナウイルスの影響で、八坂神社の祇園祭も大幅に縮小されて御神霊渡御祭という形になりました。そして粟田神社の粟田祭も同じ名称の「御神霊渡御祭」として、唐櫃に御神霊をお遷ししての巡行となりました。10日の午後1時から神社を出発しましたが、その際に境内で少しだけ剣鉾が差されました。
剣鉾は高さが7m~8m、重さ40㎏~60kgで、重心が上にあるため持ちあげるのも非常に難しく、まさに名人芸。剣の下部には鈴(りん)が付いており、鉾を揺らすことで澄んだ音が響き渡ります。剣鉾は厄払いのための道具で、道筋を祓い清め悪霊を鎮める祭具。本来は神輿に先立って進むことで、神輿の巡行路が清められていきますが、今回は唐櫃の先導ということで、1本だけが巡行しました。久しぶりに耳にした剣鉾の音に、大いに感動させて頂きました。
神社を出た行列は、知恩院の黒門前にある瓜生石(うりゅうせき)へと向かいます。例年であれば、神輿が出る神幸祭の前日の夜に、石の前で神仏習合の「れいけん祭」が行われますが、今回はその代わりとして石の前で祝詞が奏上されました。瓜生石は知恩院ができる前からあると伝わる石で、知恩院の七不思議のひとつとしても知られています。この石に八坂神社の牛頭天王(スサノオ)が降臨して、一夜のうちに石の上に瓜が生えたとされています。また、二条城への抜け道だとか、隕石ではないかという説もある不思議な石。伝承では、その石から生えた瓜についていたお札に、粟田神社の旧名である「感神院新宮」と書かれていたとされることから、例年瓜生石で儀式が行われているのです。今年は剣鉾をしっかりと立て、粟田神社の関係者のみで儀式が行われたのが印象的でした。
その後、一行は青蓮院の四脚門をくぐって境内に入っていきました。こちらは例年であれば神輿が階段を上がっていくダイナミックな光景が見られる場所ですが、今年は唐櫃とあってやや寂しくはありました。それでも、こうして氏子地域を進み、行事の重要な部分は形を変えても維持されていることは、ありがたいことです。関係者の皆様に心から感謝いたします。私は時間の都合でここまでしか見られませんでしたが、なんとか新型コロナウイルスが終息に向かっていってほしいと願っています。来年こそは立派な大燈呂や神輿の巡行を目にできるとよいですね。
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吉村 晋弥(よしむら しんや)
京都検定1級に3年連続最高得点で合格(第14回~第16回、第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として10年以上。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2020」監修。特技はお箏の演奏。
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