西本願寺の唐門の修復が進み、美しい姿の一部を目にすることが出来ます。
境内南の唐門は桃山時代の豪華な装飾彫刻を充満した檜皮(ひわだ)葺き・唐破風の四脚門で、彫刻の見事さに日の暮れるのを忘れることから、日暮門(ひぐらしもん)とも呼ばれています。西本願寺が現在地に移転した1591年頃の建立とされますが、装飾のほとんどは当初のものではなく、1618年に堀川通から現在地に移築された際に加えられたものと考えられています(1617年の火災で焼け残った本願寺最古の建物とも)。唐門は2018年から修復に入り、2022年3月までの予定ながら、現在は修復を終えたと思しき部分の美しい姿の一部が目に出来るようになっています。
日暮門の名に違わず、彫刻は本当に素晴らしく、扉の正面に遊ぶ唐獅子もかわいらしいです。表側から見える側面の彫刻は、黄石公(こうせきこう)と張良(ちょうりょう)の逸話。裏側は許由(きょゆう)と巣父(そうほ)の故事ですが、扉が開いていたため裏面のみが見えました。
張良が秦の始皇帝を暗殺しようとして失敗し、身を隠していたある時、一人の老人(黄石公)と出会いました。老人は沓(くつ)をわざと橋の下に落として、袂を歩いていた張良に「拾え」と命じます。張良は素直にそれに従いました。老人は一度は笑って去りますが、後に戻ってきて5日後の朝に再会を約束しました。
5日後、先に来て待っていた老人は、日が昇ってから現れた張良に「目上の者との約束をしておきながら遅れてくるとは何事か」と、また5日後に会う約束をします。次の5日後、張良は日が昇ると同時に行ったものの、老人は既に来ていて以前と同じことを言うのです。三度目、日の昇る前に行くと老人は後から来て、その謙虚さを褒め、張良に太公望(たいこうぼう)の兵法書(六韜:りくとう)を与えたといい、のちに張良は劉邦(りゅうほう)を助けて秦を滅ぼし、漢を建国しました。
色鮮やかな装飾の唐門は、まさに日暮門にふさわしく、日が暮れるまで眺めていられそうです。最終的な修復完了はまだ先ですが、お散歩などでお近くに行かれる際にはぜひご覧になって見て下さい。
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吉村 晋弥(よしむら しんや)
京都検定1級に4年連続最高得点で合格(第14回~第17回、第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として10年以上。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2020」監修。特技はお箏の演奏。
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