大原の寂光院では沙羅の桜(夏椿)が花を咲かせていました。
寂光院は、平家滅亡後に平清盛の娘である建礼門院・徳子が隠れ住んだ地として知られ、カエデの木が立つ参道の階段を登ったところに本堂があります。三千院に比べると訪れる人が少なく、2000年の火災後に再造された六万体地蔵菩薩や建礼門院・阿波内侍像ともゆっくりと向き合うことができるお寺です。
平家物語を読んでから訪れると感慨がわく場所で、建礼門院が隠棲した翌年の春、後白河法皇が寂光院を訪ねる場面は、物語の最終盤を彩ります。寂光院の門前を通り過ぎた奥には阿波内侍をはじめ、建礼門院ゆかりの女性たちの供養塔も建っています。
境内では沙羅の花が苔に散り敷いていました。「沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす」の平家物語の一節にもあるように無常を思わせてくれる花です。正確には「夏椿」という花で、お釈迦さまが入滅する(亡くなる)際に、白い花を咲かせて悲しみのあまり枯れてしまった「沙羅双樹」とは異なる花です。
気候の違いで日本では同じ花が育たないため、白色で椿と同じくポトリと花を落とし、さらに1日花という儚い姿から、夏椿が沙羅双樹の花とみなされました。建礼門院ゆかりの寂光院にもふさわしい花でしょう。雨の寂光院は苔も大変綺麗でした。
ガイドのご紹介
京都検定1級に4年連続最高得点で合格(第14回~第17回、第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として10年以上。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2020」監修。特技はお箏の演奏。
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