旧三井家下鴨別邸の紅葉ライトアップが12月3日~5日まで行われています。庭園が、和ろうそくの柔らかい灯りで照らされています。
旧三井家下鴨別邸は、下鴨神社の南の参道入り口付近に入り口があり、旧財閥で知られる三井家の先祖の霊を祀った顕名霊社(あきなれいしゃ)への参拝の休憩所として、大正14年に三井家10代目の三井八郎右衛門高棟(たかみね)によって建てられました。その際、木屋町三条上るにあった明治13年建築の三井家の木屋町別邸が主屋として移築されました。建物は変遷を経て、平成25年に文科省の所管となり管理団体は京都市に移され、老朽化部分の修復などが行われて、公開となっています。
旧三井家下鴨別邸は「主屋」「玄関棟」「茶室」の3棟からなる、望楼が特徴的な木造三階建てで、内外ともに簡素な意匠でまとめられています。外から見ると4階建てにも見えるのが面白いところ。玄関は複数あり、主人や使用人などの格によって使い分けられていました。杉戸絵には、原在中の長男・原在正が描いた見事なクジャクの絵があり、下鴨別邸の象徴のようになっています。
さて、今回の紅葉ライトアップは、他所で行われている”明るい”ライトアップとは異なり、和ろうそくの幻想的な灯りで庭園を照らす”暗い”ライトアップが特徴です。とはいえ、紅葉には明るいライトが当てられており、周囲が暗い分、紅葉の輝きは際立って見えます。建物は2階が特別に公開されており、2階の窓から額縁状に臨む構図が個人的にはお勧めだと感じました。
今回のライトアップで使用されている”和ろうそく”は、伏見で和・京蝋燭を制作されている「中村ローソク」さんのもので、約250個の竹灯籠や石灯籠内で庭園が灯されています。石油系原料を使った西洋ローソクとは違って、和ろうそくは植物性の原料で油煙が少なく、環境にもやさしい灯り。 中村ローソクさんは、明治25(1887)年創業で、安価な西洋ローソクが広まって需要が減る中、手作りの和・京蝋燭の伝統を守り続けています。
和ろうそくの大きな特徴は炎の揺らぎ。炎が大きくゆっくりと揺らめき、風のない場所でもゆらゆらと揺れ、炎を見つめていると心がリラックスする効果もあるのだとか。融点が低い植物系原料の灯りの色は、ほの暗いオレンジ色で、優しく温かみのある色合い。ぜひ、和ろうそくが灯されている竹灯籠の炎にも注目をしてみて下さい。なお、今回の記載内容は、中村ローソクさんのホームページを参考にしました。邸宅内では、和ろうそくの販売も行われていますので、和ろうそくについて気になることはご質問もいただけるでしょう。
今回のライトアップは、12月3日~5日までの3日間。時間は17時45分~20時30分(昼夜入替制)。料金は1200円。高めではありますが、高価な和ろうそくがふんだんに使われていたり、普段は夜間非公開ということもあるでしょう。ローソクを使用するイベントの為、悪天候時は中止となるとのこと。今のところ、4日夜はにわか雨の可能性がありますが、5日は問題ないでしょう。もし中止の場合はこちらに掲載されるそうです。幻想的な和ろうそくによるライトアップ。よければ訪れてみて下さい。
ガイドのご紹介
京都検定1級に4年連続最高得点で合格(第14回~第17回、第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として10年以上。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2022」監修。特技はお箏の演奏。
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