緑が美しい瑠璃光院

比叡山のふもと、八瀬比叡山口駅を降りてから歩いて10分ほどの場所にある瑠璃光院を訪れました。

瑠璃光院

瑠璃光院は、洛北の比叡山の麓にある浄土真宗のお寺です。市街地から離れてはいますが、叡山電車の八瀬比叡山口から徒歩約10分と交通の便は悪くない場所にあります。八瀬辺りまで来ると自然がいっぱいで、遠くへ旅行に来たような気分さえ感じられるでしょう。瑠璃光院の建物やお庭は、かつては喜鶴亭という高級料理旅館だったものです。1日に4組限定だったそうで、その時代をご存じの方もおられるかもしれません。

瑠璃光院

もともとこの地には、明治期の実業家・田中源太郎が庵を構え、その庵は三条実美によって喜鶴亭と名付けられました。田中源太郎は亀岡出身の実業家、亀岡では今でも名が知られている人物です。具体的には、山陰線を亀岡まで引き、京都電灯や京都鉄道など数々の会社を設立。今でも彼に起源を持つ建造物や会社は京都にいくつも存在しています。八瀬から比叡山へと登る叡山ケーブルも、田中源太郎の京都電灯がひいたものでした。そんな縁から、彼はこの地に別荘を構えたのでしょう。

瑠璃光院

田中源太郎の庵は、昭和初期に京都電灯の重役の個人別荘として、現在の数寄屋造りの建物に改築され、自然を活かした名庭が造営されました。その後、故あって京都電灯の経営を引き継ぐ京福電鉄の所有となり、先述の高級料亭へと姿を変えました。その料亭が廃業する際に、貴重な文化財や風景が失われることを惜しんだ光明寺が買い上げて、2005年に現在の瑠璃光院として生まれ変わったのです。このように瑠璃光院は、お寺でありながら高級料亭の面影を色濃く残しているところが、他とは違うといえるでしょう。

瑠璃光院 山路地の庭

お庭の特徴は楓と苔の種類の多さ。楓の葉はよく見ると確かに大きさや形が違っていて、秋の色づきも異なります。瑠璃光院の紅葉は、例年見事なグラデーションで楽しめます。苔も他のお庭では使われない種類があり、その分手入れが大変難しいのだそうです。

瑠璃光院 瑠璃の庭

瑠璃光院のお庭は、山門を入ってからの「山露路の庭」、寺名にも繋がる「瑠璃の庭」、一筋の川と高低差で龍を表す「臥龍の庭」の三種類があり、それぞれに見事。瑠璃の庭は、浄土の世界を再現しているそうです。苔には水が打たれているため晴れた日でもしっとりとしていて、そこに光が差すと一瞬苔が「瑠璃色」に輝いたところから、瑠璃光院と名付けられました。

瑠璃光院

瑠璃光院には「喜鶴亭」の名を受け継ぐ茶室もあります。玄関を入ってすぐには、三条実美直筆の額もかかっていますので、お見逃しなくご覧ください。また、壬申の乱に際し、大海人皇子が背中の矢傷を治したという「矢背」の伝説にちなんだ「かまぶろ」もあります。かまぶろは料亭時代は実際に使われていたそうです。

瑠璃光院 かまぶろ

さて、瑠璃光院は庭園の美しさから年々人気が出て人出が多くなったため、建物の老朽化も鑑みて2013年に一時拝観が休止となりました。その後、再開を望む声もあって再び拝観が始まりましたが、拝観料は2000円と高額になりました。それでも国内外から多くの人が訪れ、特に紅葉シーズンは予約でいっぱいになります。特に机に映り込む楓のの光景は近年広まっていて、いわゆる「映える」写真を撮りに訪れる方も多いと思います。夏の公開は予約が不要。8月18日までです。

瑠璃光院

ガイドのご紹介 吉村 晋弥

京都検定1級に7年連続の最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。BS朝日「あなたの知らない京都旅」、KBS京都(BS11)「京都浪漫」出演。特技は

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