宇治川に架かる白虹橋と吊り橋の天ヶ瀬橋

宇治川の天ヶ瀬ダムの下に、白虹橋と吊り橋の天ヶ瀬橋があります。

天ヶ瀬橋

天ヶ瀬ダムの下に架かるのが白虹橋(はっこうばし)。平成28(2016)年に完成し、翌年に供用されたPC(プレストレストコンクリート)単純複合トラス橋です。古い白虹橋はやや上流部にありましたが、天ヶ瀬ダム再開発事業で放水トンネルができることに伴い、少し下流に新たに架け直されました。新たな橋の構造は1990年に開発されたもので、白虹橋の建設前でまだ3例しか施工実績がないという工法でした(完成時で5例目のよう)。

白虹橋

新しい白虹橋の景観コンセプトは「渓谷との調和,虹と清流」だそうで、デザイン性も重視されたようです。一方で両岸に山が迫る谷あいの地形で足場が狭く、河川内に橋脚が設置できないため吊床版橋(つりしょうばんきょう)の技術を活用するなどの難工事で、土木の視点からも注目をされた橋です。私自身は土木の専門家ではないためこれ以上は書けませんが、構造や工法にご興味のある方は、ぜひ調べてみてください。

白虹橋

白虹橋を横から見ると、下部に三角形のトラス構造が確認できますが、橋自体が巨大な存在感を持つような外観ではないという印象です。上流部には天ヶ瀬ダムの堤体や新たに建設された放水用トンネル、旧・志津川発電所のレンガ造りの建物が望めます。ダムの放水時には迫力ある光景が目にできそうです。

白虹橋上流 天ヶ瀬ダム

橋の北側には、詩人・尹東柱(ユン ドンジュ)の記念碑「記憶と和解の碑」が建ち、「新しい道」という詩が刻まれています。尹東柱は1917年に旧満州のクリスチャンの家に生まれ、日本統治下の朝鮮で学び、1942年に日本の立教大学へ留学すると、翌年京都の同志社大学に転学しました。

白虹橋上流 天ヶ瀬ダム

付近は尹が同志社大学の友人らとハイキングで訪れた場所で、やや下流の天ヶ瀬吊り橋で生前最後の写真におさまりました。尹は1943年7月に治安維持法違反容疑で逮捕されると懲役2年の判決を受け、福岡刑務所に収監。1945年2月16日に27歳で獄死しました。戦後の1948年、尹東柱の詩集が韓国で出版され、のちに日本語にも翻訳され、その名が広まることになりました。

尹東柱「記憶と和解の碑」

この記念碑は、2017年の尹の生誕から100周年の節目に建てられたものです。碑の前では尹東柱を偲ぶ「つどい」が10月に行われています。なお、尹の詩碑は同志社大学今出川校地のハリス理化学館の脇にもあり、学生は目にしたことがあるのではないでしょうか。また、京都市左京区の下宿跡の地には「尹東柱留魂之碑」も建っています。

尹東柱「記憶と和解の碑」

さて、白虹橋の下流には吊り橋の「天ヶ瀬橋(天ヶ瀬吊橋)」が架かっています。もとは1942年に架けられ、先述のように詩人・尹東柱が生前最後の写真に納まった場所でした。1995年には修理を受け、2020年には京都府内産のヒノキを用いて木材部分が新しくなりました。橋は人道橋で車は渡れません。実際に歩いて渡ってみるとほとんど揺れを感じず、宇治川の渓谷の雰囲気を感じることができました。

天ヶ瀬橋
天ヶ瀬橋からの宇治川

ガイドのご紹介 吉村 晋弥

京都検定1級に7年連続の最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。BS朝日「あなたの知らない京都旅」、KBS京都(BS11)「京都浪漫」出演。特技はお箏の演奏。

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