久御山町　個性的な玉田神社

久御山町にある玉田神社は近年ＳＮＳなどでも注目をされている神社です。

玉田神社の創建は、奈良の平城京に都が移った和銅3（710）年と伝え、春日神の四柱に加え八幡神の四柱（武内宿祢を含む）を加えて八柱を祭神としてお祀りした時代もあったようです。その後、平安京に都が移ってきますが、927年にまとめられた延喜式神名帳に記載はなく、郷村社であったといいます。

その後の変遷は不明ながら、神社に伝わる棟札では天正14年（1586）5月に、付近に存在した御牧（みまき）城（西一口城）主「御牧勘兵衛尉尚秀」が願主となり社殿を再建したと伝わるそう。現在の御祭神は、武甕槌命（たけみかづちのみこと）、天児屋根命（あめのこやねのみこと）、誉田別命（ほんだわけのみこと）、武内宿祢命（たけしうちのすくねのみこと）の四柱をお祀りしています。現在の本殿は江戸時代の寛永元（1624）年に修理をされ、以後も修理を経ながら現在に残されている貴重な建築です。

玉田神社は火難除けで信仰されてきました。伝説では奈良時代の聖武天皇の頃、橘諸兄（たちばなのもろえ）に命じ、玉田神社のある御牧（みまき）から馬一頭を召し出させたといいます。大変な名馬であったその馬は、ある時三日間いななき続けると、三日後に内裏の外で火災が起きました。この時は炎が収まりましたが、再び馬が三日間いななくと、また三日後に内裏の外で火災が起きてしまうのです。

すると馬は繋ぎをほどいて走り出し、火中へと飛び込んでしまいました。不思議なことに馬が飛び込むと炎の勢いは収まり、しばらくして馬は煙の中から無事に姿を現すと、厩舎へと戻って行ったのです。このことが聖武天皇に奏せられると、天皇は「稀代の名馬である」として、詔勅により馬の名を「火鎮（ひしずめ）」と名付けられ、この馬は天皇が崇敬する玉田大明神が召させた神馬であろうとして、元の御牧に帰されたと伝わります。

こうして「火鎮」は地元でも名馬として大切に扱われ、やがて馬が死ぬと、立派な塚を作り「馬見塚」として丁重に葬ったと伝わっています。境内にはこの由緒が記された石碑も建っています。神社はユニークなことを行っておられるのも特徴で、火鎮にちなんで「SNS炎上除けのお守り」を授与されておられるのも面白いです。

玉田神社はニュースで話題になることもありました。本殿向かって右側の玉垣には、元阪神タイガースの片岡篤史さんがバットの形をした玉垣を奉納されています。片岡氏は久御山町の御牧小学校出身で、玉田神社はまさに地元の神社となります。さらに、元宝塚歌劇団の野々すみ花さんも久御山町出身で、玉垣を奉納されています。玉田神社は地元の方々に大切にされている神社だと感じました。

最近では「どこでもドア」を思わせるドアが置かれ話題になりました。マガタマダーという公認キャラクターがいたり、御朱印も折々ユニークで可愛いデザインとなっています。個人的には社殿の彫刻の獅子がペロッと舌を出しているのに惹かれました。かつては水害常習地域とあって、周囲の家々や神社も土地が高くなっているのも印象的でした。駐車場は境内の西側にありますので、機会がありましたら足を延ばしてみて下さい。

ガイドのご紹介　吉村晋弥

京都検定1級に7年連続の最高得点で合格（第14回合格率2.2％）、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。BS朝日「あなたの知らない京都旅」、KBS京都（BS11）「京都浪漫」出演。特技はお箏の演奏。