特別公開中!豪華な内装の長楽館

「京の夏の旅」で長楽館の「御成の間」と「長楽庵」が特別公開されています。

長楽館 長楽庵のステンドグラス

円山公園の南にある長楽館は、明治42(1909)年に「たばこ王」とも称された実業家・村井吉兵衛によって迎賓館として建てられました。9月末までは「京の夏の旅」で、最上階の「御成の間」と茶室の「長楽庵」が特別公開されています。いずれも通常は非公開の場所です。一方で通常営業も続けられていますので、上記二つの部屋以外を覗く際はご注意下さい。

長楽館

長楽館の名称は、伊藤博文が訪れた際に「この館に遊ばば その楽しみや 蓋(けだ)し 長(とこし)えなり」と称えたことから名付けられたとされ、設計はアメリカ人のJ.M.ガーディナー。外観がルネサンス様式ですが、内部は部屋ごとに意匠が異なっているのが特徴で、1階の迎賓の間はロココ様式を基調とした華麗な造り。

長楽館

食堂の間はイギリス・ヴィクトリア調のネオ・クラシック様式、現在はブティックスペースのサンルームは、床はイスラム風の幾何学模様のタイル、壁のレリーフはイスラムのモスクとなっています。他にも梅、菊、蘭、⽵の四君⼦の⽔墨画のある中国⾵の部屋や、アメリカ的なバルコニー、さらに3階には書院造の和室もあるなど、欧米と東洋の各国の趣を折中した、大変珍しい空間となっています。

長楽館

さて、今回公開されているのが、最上階の「御成の間」と茶室の「長楽庵」です。受付は2階にあり、靴を脱いで階段を上がって進むと、まず長楽庵を見学できます。表千家の茶室・残月亭を模して作られた茶室で、趣ある和の雰囲気。内部は十畳敷で二畳の上段があります。半月を表現した正面の窓からは円山公園などが望め、はめられているガラスは一部に大正ガラスも残されています。

長楽館 長楽庵のステンドグラス

目を引くのは左右の丸窓で、それぞれ春の桜と秋の紅葉が描かれたステンドグラスになっています。優しい色合いが印象的で、西洋の要素も取り入れた空間が面白いです。上段には漆塗りの花器が置かれ、「喫茶去(きっさこ:禅の言葉で「どうぞ、お茶でも召し上がれ」の意味)の掛け軸が掛けられていました。

長楽館 長楽庵

そして3階に進むと「御成の間」が公開されています。ひと際豪華な部屋で、ベースは書院造の和室で、違い棚や付書院も配されています。天井は格式高い折上格天井。格子が重なる十字の部分には、村井家の家紋の「三柏」の紋があり、この紋は長楽館の入り口など、随所で見ることができます。

長楽庵 御成の間

天井にはフランスのバカラ社製のガラスが使われた球型のシャンデリアがある一方、襖絵は金色の和風など、和洋の技術が調和しています。窓は禅寺に多い華頭窓のデザインで、北の窓からは円山公園や京都市街が一望できます。円山公園の桜が咲く時期にはさぞ素晴らしい眺めなのでしょう。東を向くと東山の山並みが見え、こちらも印象的。伊藤博文が眺めたのはこの眺めだったとか。

長楽庵 御成の間

長楽館は調度品も京都市有形文化財の指定を受けているほど貴重なものですが、御成の間には「京薩摩」の輸出用陶磁器が置かれていました。本来の薩摩焼が1867年のパリ万博で高評価を受け、京都でも薩摩焼に倣って明治・大正期に粟田口の窯元を中心に、金の彩色絵を特徴とする陶器が作られました。輸出用であったため、国内での現存数は限られているとのことでした。

長楽庵 御成の間 京薩摩

大変洗練された空間の「御成の間」。村井吉兵衛も自慢の部屋だったことでしょう。「京の夏の旅」での公開は9月30日までですが、公開日が限られており、この先の9月中は土日の公開がない一方、16日・23日の祝日は公開です。平日は11時~16時30分最終受付。16日・23日は13時~16時30分最終受付の時間にもご注意ください。料金は800円です。詳しい公開日程など、詳細はこちらからご確認の上、訪問をしてみてください。

長楽庵 御成の間からの眺め

ガイドのご紹介 吉村 晋弥

京都検定1級に7年連続の最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。BS朝日「あなたの知らない京都旅」、KBS京都(BS11)「京都浪漫」出演。特技はお箏の演奏。

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