神泉苑から中秋の名月を望みました。
2024年は9月17日が中秋の名月です。中秋の名月は、旧暦8月15日の月のことで満月と一致しないことも多く、今年の満月は18日です。神泉苑の観月会は、今年は祝日だった16日に行われましたが、翌日の17日夜に境内から中秋の名月を眺めてきました。
神泉苑は平安京造営時に設けられた天皇の禁苑、すなわちプライベートのお庭で、どんな日照りの時にも湧き出る水が枯れることがなかったところから、神聖なる泉の苑池、神泉苑と呼ばれました。そのため、神泉苑は雨乞いの地ともなり、空海と守敏の雨乞い対決や、神泉苑で雨乞いの舞を舞った静御前(源義経に見初められたのはその後の「住吉での雨乞い」とも)など、様々な物語も生んでいます。現在の神泉苑は、二条城のお堀の造営に伴って縮小され、二条城の南にその名残の池が残されています。
池に浮かぶ善女竜王社には真正面からも行けますが、朱色の法成橋に回り込み、願いを一つだけ思いながら渡って善女竜王社に参拝をすれば、願いがかなうとも言われています。神泉苑を象徴する美しい橋で、背景に月を望む光景も絵になります。今年は中秋の名月と観月祭がずれたため、この日に行事があると思って訪れた方もおられるようでした。
法成橋の西側、本堂の脇には、江戸時代の俳人で画家でもあった与謝蕪村の「名月や 神仙苑(神仙苑)の 魚(うお)おとる(躍る)」の句碑が建っています。句の脇には「雨のいのりのむかしをおもいて」と書かれており、蕪村は雨乞いの地としての神泉苑を思っていたことがわかります。
以前に神泉苑で月を眺めた際に、時折魚が池からジャンプして「ドボン」と音を響かせました。これぞ「魚躍る」なのだなぁと、蕪村の句を追体験した気持ちになりました。蕪村の没年は1784年ですが、その4年前に刊行されている都名所図会で神泉苑を見ると、当時は法成橋はありませんでした。神泉苑から望む名月も、やはり時代とともに違っていきます。今年は観月祭には足を伸ばせませんでしたが、見事な名月を楽しませていただきました。
ガイドのご紹介 吉村 晋弥
京都検定1級に7年連続の最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。BS朝日「あなたの知らない京都旅」、KBS京都(BS11)「京都浪漫」出演。特技はお箏の演奏。
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