六波羅蜜寺では、12月5日まで本尊・十一面観音立像の御開帳が行われています。
秘仏の国宝・十一面観音立像は、11月3日から12月5日かけて33日間の特別開帳。33日間の理由は、観音が相手に応じて33の姿に変化をし、人々を救うとされるところから来ています。12年に一度の辰年のご開帳のため、2012年以来12年ぶりのご開帳となります。
辰年に開帳される理由です。六波羅蜜寺の前身である西光寺の頃、本堂の前に大きな池があって龍が住んでいました。その龍はお参りの方々を脅かしたり、お参りの邪魔をしたりしていたそうですが、その事を知った空也上人は、錫杖を振って龍を諭すと龍は改心。寺とお参りの方々守ることを誓い、それ以降龍は寺の守り神となりました。辰年の御開帳が恒例なのはこのためで、1363年に再建された本堂にも見事な龍の絵が描かれています。
この話にちなみ、江戸時代から「淵龍」と書かれた護符が、12年に一回の御開帳時には授与されています(ただし近年はご開帳時以外でも授与されていたかと)。色は5色あって今回は白。全て集めるには何年かかるかという気の長さですが、全色集まると末永く家運が栄えるとされます。なお、「淵龍」の護符は文様無しのものを500円で授与していただけます。
ご本尊の十一面観音立像は、六波羅蜜寺の前身である「西光寺」の本尊でもあります。天暦5(951)年、都に疫病が流行った際、空也上人は貴賎を問わず喜捨をつのり、大般若経の書写と、金色の一丈の観音像(今回ご開帳の本尊とみられる)、梵天・帝釈天・四天王像の造像を発願(大般若経は前年の発願とも)。この観音像を安置する寺として、六波羅蜜寺の前身となる西光寺が建立されました。応和3(963)年に大般若経600巻の供養を執り行い、鴨川の東岸に大般若経を納める宝殿を建て、盛大な大法会が催されました。
空也上人は貧しい庶民の救済に尽力し、疫病が流行った際には新たな井戸を掘り、火葬を勧めるなど衛生面での対策を施したほか、梅と昆布を入れた茶を振る舞って人々を救い、時の村上天皇も服用したといいます(皇服茶)。また鉦を叩き念仏を唱える踊り念仏を始めたともされ、六波羅蜜寺には空也上人由来という踊躍念仏が伝わっています。972年に70歳で没した後も、空也上人の広めた念仏は後世に受け継がれ、鎌倉時代の一遍上人は空也を篤く敬っていました。
空也上人の思いを伝える本尊が、幾星霜を経て現代にも伝わっているのは奇跡とさえ言えるでしょう。高さは2.59m(258.5cm)ある大型の観音像で、実際に作風は平安時代中期のものとされ、2.5mを超える巨像ながら、体幹部分はヒノキの一木造りで全体として丸みのある穏やかな造型。空也上人の伝説とも矛盾はなく、1000年を越えて人々の信仰を集め続けてきたとは鳥肌が立ちます。十一面観音は観音の深い慈悲を表しており、信ずる者は10種の現世利益と4種の来世での果報を授かれるとされます。特に現世利益は素晴らしく、病気平癒はもちろん、火や水の難に合わない、不慮の事故でも死なない、金銭や食事に困ることがない、など願ったりかなったりの御利益が並んでいます。
六波羅蜜寺の境内には平清盛の供養塔があり、阿古屋塚は平家に仕えた平景清の愛人・阿古屋を偲ぶもので、歌舞伎の演目「壇ノ浦兜軍記」での「阿古屋の琴責め」でも親しまれています。近年新しくなった令和館(宝物館)では、清盛の像も安置されており、平家一門の繁栄を願った経巻を持ち、穏やかな表情をしています。また、空也上人像は非常に有名です。生き写しのごときその像では、口から発せられる「南無阿弥陀仏」の言葉が立体表現されて、仏師(康勝)の力量も見事。キラリと光る玉眼も見逃せません。他にも素晴らしい仏像が多数あり、見どころが様々にある六波羅蜜寺。12月5日までのこの機会に、是非ご本尊を拝みに訪れてみてください。
ガイドのご紹介 吉村 晋弥
京都検定1級に7年連続の最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。BS朝日「あなたの知らない京都旅」、KBS京都(BS11)「京都浪漫」出演。特技はお箏の演奏。
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