東本願寺 宮御殿・桜下亭の特別公開

京の冬の旅」の特別公開で、東本願寺の宮御殿と桜下亭を訪れました。

東本願寺 宮御殿 撰虫図(むしえらびず)

東本願寺は、慶長7(1602)年に、徳川家康が教如上人に従来の本願寺(西本願寺)の東に土地を与えて、分立させたのが始まりとされます。現在の正式名称は「真宗本廟」。江戸時代後期にたびたびの火災に見舞われ、現在の建物は明治期の再建で、烏丸通に面して巨大な伽藍が立ち並んでいます。明治28(1895)年再建の御影堂は927畳敷の大広間を持ち、奈良東大寺の大仏殿とともに世界有数の木造建築物です。

東本願寺

御影堂と阿弥陀堂の間には多くの女性信者が髪を断ち寄進した「毛綱」が展示され、再建時にはこの毛綱で用材の巨木を引きました。御影堂門は高さが約27mで、東大寺や知恩院の門を上回り、国内最大です(文化財に指定・登録された木造山門に限る)。寺内は西本願寺と同様に、御影堂と阿弥陀堂を自由に参拝することができます。巨大なお堂は青空にも映え、圧倒的な存在感を放っています。

東本願寺 宮御殿

現在は3月18日まで「京の冬の旅」特別公開で、宮御殿・桜下亭(おうかてい)を拝見することができます。参拝接待所の前に受付があり、料金は800円です。宮御殿は、明治13(1880)年に大宮御所(上皇の后の御所)から下賜されたもので、部材のまま保管されていましたが、明治34(1901)年に現在地に建てられました。内部は畳のヘリが赤色で、御所にあった建物を思わせます(京都御所の諸大夫の間の中の”桜の間”の畳のヘリが赤色です)。大宮御所時代には女官が使用した部屋だったそう。宮御殿は襖絵や庭園の写真撮影ができました。

東本願寺 宮御殿 大鷹狩図

襖絵は宮中の行事を描いた美しい大和絵の「四季行事絵図(作者不明)」で、春の「子日遊図(ねのひのあそびず)」、秋の「撰虫図(むしえらびず)」、冬の「大鷹狩図」がありますが、夏の絵は見当たらないのは不思議です。「撰虫図」は、秋草茂る嵯峨野で松虫や鈴虫を捕り、宮中に献上する“虫合(むしあわせ)”を題材に描かれた襖絵。御殿の広間に描かれた絵を間近で見ることができますが、よく見ると小さな虫が描かれおり、探してみるのも楽しいです。

東本願寺 宮御殿 子日遊図

宮御殿の南側は、築山と池の庭園となっていますが、築山の南側は約5mの防火壁(石垣)に作られています。歴史上の東本願寺の火災は北側が火元となっており、万が一の火災の際、御影堂などへの延焼を防ぐため、池と防火壁が設けられたとのこと。池の水はかつては琵琶湖疏水の水を引いた本願寺水道からの水だったそうですが、現在は地下水を汲み上げているそうです。

東本願寺 宮御殿 庭園

もうひとつの公開場所の桜下亭は第22代・現如上人の17回忌法要にあわせ、東京の霞が関にあったという住居の一部を昭和14(1939)年に移築した建物で、数奇屋風建築が特徴。内部には円山応挙が晩年の59歳ころに描いた「稚松図」、「壮竹図」、「老梅図」の襖絵がありますが、この襖絵は岐阜別院にあったものが明治24年の濃尾地震による被災で本山の東本願寺に移されていたものだそうです。

東本願寺 宮御殿 撰虫図(むしえらびず)

建物と来歴は違うものの、違和感なく収まっていました。松・竹・梅の絵は幼・壮・老をも表しているそうです。作者不明ながら杉戸絵にもウサギなどの動物が描かれていてかわいかったです。公開は貴重な機会ですので、ぜひ訪れてみてください。

東本願寺 宮御殿 撰虫図(むしえらびず)

ガイドのご紹介 吉村 晋弥

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: P4208474_2-150x150.jpg

京都検定1級に7年連続の最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。BS朝日「あなたの知らない京都旅」、KBS京都(BS11)「京都浪漫」出演。特技はお箏の演奏。

散策・講座のお知らせ

※1月30日(木)19時~21時で、「京都館PLUS X内(メタバース)」にて、「冬の京都の楽しみ方教えます!」をテーマにお話しさせていただきます。参加無料。詳細は下記よりご覧ください。

https://www.city.kyoto.lg.jp/sankan/page/0000336084.html

【現地+配信の講座を受付中!】
奥深い京都へのいざない!マニアック京都講座
1月「因幡薬師堂と六角堂」、2月「詩仙堂・圓光寺・狸谷山不動院」、3月「大山崎 繫栄の歴史と現在の見どころ」

【散策を受付予定!】
1月29日(水)13時30分~16時頃
「京の冬の旅」特別公開の六角堂から三条通の近代建築を抜けて革堂・行願寺と周辺社寺へ

【「丹後七姫講座」を開催中!】 ※原則第2金曜日19時30分~
【丹後七姫講座】丹後の歴史を彩る女性たちの物語

「過去の講座動画」の販売を再開しました!
【オンラインサロン】吉村晋弥のマニアック京都サロン を募集中!

「まいまい京都」さんで『【オンラインサロン】吉村晋弥のマニアック京都サロン』を募集中。毎月第2水曜日20:00~21:30頃の配信と吉村のコースの抽選が当たりやすくなります。詳細はリンク先をご覧下さいませ。

PAGE TOP