祝園神社の由来と居籠祭

先日、精華町にある祝園神社(ほうそのじんじゃ)の居籠祭(いごもりまつり)を見に訪れました。

祝園神社

祝園神社の居籠祭は、毎年、正月の初申(さる)の日(申の日が3回ある年は中の申)から三日間行われるお祭りで、年によって日程が変わる点にご注意ください。2025年は1月15日~17日で行われました。

祝園神社

祝園(ほうその)の地名由来です。奈良時代に編纂された古事記と日本書紀には、神話や古代の伝承が載りますが、第10代・崇神(すじん)天皇の御代には、南山城でタケハニヤス(崇神天皇の叔父)が反乱を起こした話があり、その経緯が南山城の地名の由来となっていきます。大まかな内容は以下です。崇神天皇は4人の将軍を各地へと派遣し、そのうちのオオビコが、途中でタケハニヤスが天皇の命を狙っているとの歌を耳にして引き返します。程なくタケハニヤスは南山城で反乱を起こし、オオビコの率いる天皇軍とワカラ川を挟んで挑み合いました。

祝園神社

そこから川をイドミ川と呼び、訛って泉川(木津川)となったといいます。タケハニヤスは矢によってあっけなく討たれ、タケハニヤスの兵は敗走。オオビコの軍は追撃して兵の首を斬り、死骸があふれました。兵を屠(ほふ)った(切り刻んだ)地をハフリ園と呼び、祝園(ほうその)の地名となったといいます。逃げた兵の一部は恐怖の余り、褌をはいたまま屎を漏らし、その地を屎褌(くそばかま)と呼び、のちに訛って樟葉(くすば→くずは)となったとされます(樟葉は大阪府)。

祝園神社

精華町の祝園神社は、祟りをなして悪病を広めたタケハニヤスの霊を鎮めるため創建されたといい、神社の南には「武埴(垣)安彦破斬旧跡」の石碑が建ち(三宅安兵衛遺志碑)、地元ではタケハニヤスが首を斬られた地とされて「出森(いずもり)」とも呼ばれています。

武埴(垣)安彦破斬旧跡

居籠祭(いごもりまつり)は、1月には木津川西側の祝園神社で、2月には木津川東側の涌出宮(わきでのみや、※正式名は和伎座天乃夫岐売神社:わきにいますあめのふきめじんじゃ)で同じ名称の行事が行われます。涌出宮の方は、年間を通じての宮座行事が国の重要無形民俗文化財に指定されています。祝園神社の居籠祭は、京都府指定の無形民俗文化財です。いずれも貴重な風俗を残す民俗行事といえるでしょう。

筵(むしろ)をかけた家

祝園神社の居籠祭は、かつては文字通り音を立てず、村の人々は家の戸口に筵(むしろ)を立てかけ、戸の開け閉めなど、一切の音を立てないようにしたそう。伝承では、牛や鶏などの動物は遠くへ預けられ、祭りの期間中は食事を作る音を出さないよう、事前に3日間を賄う精進料理を用意しておいたとのことです。いまでも一部の家は筵(むしろ)をかけている様子を外から目にすることができました。

祝園神社 居籠祭

祭りの由来は、タケハニヤスが討伐されて以後、この地域に悪疫が流行り、田畑も荒廃し、人々が病と飢えに苦しんだことから、タケハニヤスの魂を丁重に祀って鎮めようとしたことに始まるとされます。現在は、2日目に五穀豊穣を願う農耕神事として「御田の儀(おんだのぎ)」が行われているなど、今年の無事の実りを祈る行事ともなっています。また、3日目には「綱曳きの儀」があり、病魔と曳きあい病気に勝つことを表しているそうです。ずっと見たかった行事でしたが、昨年は日程の確認を失敗し見ることができず、今年は1年前から予定を開けて見に行ってきました。次回以降で詳しい行事の様子をご紹介します。

ガイドのご紹介 吉村 晋弥

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京都検定1級に8年連続の最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。BS朝日「あなたの知らない京都旅」、KBS京都(BS11)「京都浪漫」出演。特技はお箏の演奏。

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