秋の非公開文化財特別公開が行われています。山科の阿弥陀寺は、狩野岑信(みねのぶ)の絵が公開されており、幼少期に阿弥陀寺で育ったエピソードが伝わっています。

秋の非公開文化財特別公開では、山科の阿弥陀寺が特別公開されています。旧東海道からも近い場所にあるお寺で、本尊の阿弥陀如来像は修復を受けて金色に輝いていますが、平安時代の恵心僧都の作と伝わる像。特別公開されている釈迦三尊像は、江戸初期の狩野岑信(みねのぶ)の筆と伝わります。岑信は狩野探幽の弟・尚信の子である常信の次男で、尚信の孫にあたる人物です。祇園祭の菊水鉾で近年新調された、前懸・胴懸・後懸の七福神の図柄の下絵となった作品を描いた人物です。

近年、岑信の絵が阿弥陀寺に伝わる経緯が、後述する林家の口伝として残されており、その熱いお話に感動させていただきました。現地の説明書きを元にまとめると以下の内容です。1662年、岑信がまだ母のお腹の中にいたころ、京都は寛文・近江若狭地震に襲われます。父の常信は江戸におり不在。身重の母は京中の被害を避けるため、幼い長男と家人と一緒に杖を突いて京都から峠を越えて山科に入りましたが、混乱で長男・家人とはぐれてしまい、ちょうど阿弥陀寺の参道脇で疲れ果てて座り込んでしまったそう。

そこを助けたのが当時の阿弥陀寺のご住職。寺に泊まるように勧めますが、なんとその日の夜に産気づいてしまいました。翌朝何とか無事に出産をした母は、やはり長男や家のことが気になると、赤子を抱いて京へ戻ろうとしたそう。阿弥陀寺のご住職は、産後の体で赤子を抱えて戻るのは無謀だとして、赤子を寺に預けて落ち着いたら寺に戻りなさいと諭し、母はひとりで阿弥陀寺を後にしたのでした。京都の家に戻った母は長男や家人と再会できましたが、しぼんだお腹については、地震の混乱の中での死産したのだろうと思い家人も聞けなかったよう。そして悲しいことに母は無理がたたったのか、その日のうちに亡くなってしまったのです。

一方、阿弥陀寺の住職は、母が3か月経っても赤子を迎えに来ないため、ついに聞いていた母の家を訪ねますが、そこにいた常信の後妻は死産だと聞いているからと引き取ることを拒否してしまいます。仕方なく住職は赤子を寺で育てることに決め、6歳になると岑信(しんしん)と名付け、育っていったそうです。

幼少期は阿弥陀寺で育てられた岑信でしたが、その後10歳(満9歳)になった頃に、林鵞峰(林羅山の子)との偶然の縁から父の常信とも縁が戻って認知され、岑信(みねのぶ)として絵を学ぶようになりました。何とも奇跡的なお話です。絵を学ぶにあたり、岑信は左利きだったそうで、右利きへの矯正には苦労をしたそう。そうした修業時代に林鵞峰の勧めもあって、阿弥陀寺の住職と母を偲んで描いたのが、釈迦三尊像だと伝わります。赤い衣の釈迦如来は当時の阿弥陀寺の住職を、普賢菩薩は杖をつく母を、文殊菩薩は絵の修練に励む自分自身を投影して描いたとのことです。

やがて岑信は、徳川六代将軍の家宣のお気に入りの絵師となり、浜町狩野家(はまちょうかのうけ)を起こすほどになりました。岑信は宝永5(1708)年に享年47で亡くなり、墓所は東京の池上本門寺にあるそうです。岑信の心に響くエピソードが伝わる阿弥陀寺は、11月10日までの公開です。現地ではより詳しく、岑信のエピソードを知ることができます。この機会に足を延ばしてみてください。

ガイドのご紹介 吉村 晋弥

京都検定1級に7年連続の最高得点で合格(第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。BS朝日「あなたの知らない京都旅」、KBS京都(BS11)「京都浪漫」出演。特技はお箏の演奏。
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11月26日(火)午後 → 行先き未定(紅葉)
12月10日(火)午後 → 行先き未定
12月14日(土)午後 → 山科義士まつり
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11月30日(土)13時30分~16時30分頃
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12月2日(月)9時30分~12時頃
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12月2日(月)14時~16時30分
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12月15日(日)13時30分~16時30分頃
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12月22日(日)14時~16時30分頃
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