北野天満宮の北野祭の神幸祭が10月1日に行われ、今年も4日午前中まで御旅所にて「ずいき神輿」が登場しています。

今年から「ずいき祭り」の名称から「北野祭」として、8月の足つけ神事から続く一連の行事の中に位置づけられた10月1日の神幸祭と4日の還幸祭。神幸祭では、ご祭神を乗せた鳳輦ら3基が北野天満宮から御旅所へと入りました。現地でいただいたパンフレットでは、令和10(2028)年以降は、神幸祭は9月第2日曜日、還幸祭は9月第3日曜日に執り行うとのことですが、京都新聞の記事では”2027年以降”、すなわち令和9年から変わると書かれています。どちらが正しいのか。令和9(2027)年には25年に1度の半萬燈祭を控えており、現状の鳳輦とは別の神輿(みこし)が令和8(2026)年に完成予定であることからも、令和9(2027)年が正しいようには思います。ただし、確実な予定は北野天満宮からの今後の発表を待ちたいと思います。

さて、御旅所には1日から「ずいき神輿」が例年通り祀られています。ずいき神輿の飾り付けは、御旅所付近の西ノ京の人びとが担っており、神輿は小さめの子ども神輿と大人の神輿とがあります。「ずいき」とは芋の茎のことで、ずいきで屋根が飾られた「ずいき(瑞饋)神輿」が登場することからそう呼ばれています。

平安時代に御旅所付近一帯の西ノ京の人々が五穀豊穣を感謝し、新しく採れた穀物や野菜などを飾り付け、道真公の神前にささげたのがお祭りの始まり。400年前の江戸時代初め、北野天満宮の社殿が再建された1607年にずいき神輿となり、1802年には現在と同じ形の神輿になりました。明治維新の改革により祭りは中止となってしまいますが、地元の有志の力で15年後に復活を果たして現在に至っています。

神輿の四方の飾り付けは毎年異なった物語が描かれており、楽しみにされている方も多いです。材料は「土に還るもの」で行われるため毎年作り直す必要があります。千日紅は9月1日に収穫をして乾燥させたのちに、糸を通す作業を行うとのこと。花の総数は1万にも及ぶそう。また数日間持たせるため、ずいきは前日に収穫をして屋根に飾り付けます。数日経つと乾燥して縮み、屋根に隙間ができてくるため、例年4日の還幸祭の前には隙間に補充をするそうです。

近年は農家も農地も少なくなりましたが、今も住民たちが自分たちで野菜を育てて神輿を作っておられて、毎年気候が違うなか、決まった日付に収穫期を合わせるのは大変なご苦労があるようです。また、麦わら細工は再利用はできますが、その精巧な模様や龍の図柄は友禅の型彫師にお願いをしているそう。まさに住民の思いや伝統技術が一体となって受け継いで来られたお神輿です。

ずいき神輿は、それぞれ多彩な材料を見事なアイデアで使用して形作られていて、感嘆するばかり。毎年変わる四面では、今年はミャクミャク、大河ドラマ「べらぼう」にちなんだ善玉悪玉図(山東京伝「心学早染草」)、藤娘は映画の「国宝」にちなみ、パンダは和歌山のパンダが中国に帰った話題(レッサーパンダが替わって人気のようでその姿も)、アンパンマンは朝ドラにちなんでいるのでしょう。他にも鬼滅の刃や巌流島などがありました。その年の流行や話題を取り入れているため、何度でも見に行きたくなるお神輿です。そして子ども神輿では、ミッフィーちゃんや恐竜などがデザインされていました。

さて、個人的にはこのずいき神輿を見ることで「いよいよ10月が来たなぁ」と感じます。恐らく、同じような思いを持っておられるかたもいるでしょう。ずいき神輿は、4日に午前まで御旅所に鎮座し、12時半より巡行が行われます。今年も例年通りの姿を見せてくれた個性的なずいき神輿。お時間がありましたら、ぜひご覧下さい。






ガイドのご紹介 吉村 晋弥

京都検定1級に8年連続の最高得点で合格(通算10回合格。第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。BS朝日「あなたの知らない京都旅」、KBS京都(BS11)「京都浪漫」出演。特技はお箏の演奏。
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