粟田神社の粟田祭が始まり、大燈呂(だいとうろ)が登場しました。

10月の京都はお祭りが多い季節。毎週末のように秋祭りが行われています。粟田神社の粟田祭は千年以上の歴史を持つ、見どころが多いお祭で、今年は10月11日~15日で行われています。13日の神幸祭では剣鉾や神輿が出て、その前日の夜(今年は12日)には「夜渡り神事」で大燈呂の巡行や神仏習合の儀式「れいけん祭」がありました(れいけんとは霊験ではないかと見られる)。

粟田神社はもとは付近に勢力を持った粟田氏の氏神ともされますが、別の伝承もあります。平安時代の清和天皇の貞観18(876)年、都に疫病が流行った際に、天皇の使いが八坂神社(祇園感神院)に7日間こもって国家と民の安全を祈祷すると、その7日目の夜、夢の中に老人が立ちました。その老人は「私はオオナムチ(大国主命)である。祇園の東北に牛頭天王にゆかりの地があるので、その地に私を祀れば、必ず国家と民衆は安全である。」と告げて消えました。そうしたお告げから、粟田神社の社を整備して八坂神社の御祭神で牛頭天王と同一視されたスサノオとその妻・クシナダヒメ、お告げに現れたオオナムチを祀り、厄除けの神として信仰されたというものです。粟田神社は八坂神社の旧名・祇園感神院と対応して、「感神院新宮」と呼ばれていました。現在でも粟田神社の鳥居には「感神院新宮」の扁額がかかっています。

大燈呂は戦国時代の『言継卿記(ときつぐきょうき)』に載る風流(ふりゅう)燈籠がルーツとされ、江戸時代後期に途絶えましたが、2008年に京都造形芸術大学(現:京都芸術大学)の協力で復活しました。学生たちが青森のねぶたをイメージして作った灯籠があまりに見事であったため、神社が依頼をして作成したそう。毎年の作成に際しては毎年入れ替わる学生さんたちに社寺の歴史や信仰を理解する機会を設けて、燈籠のテーマを決めるなどされているそうです。

毎年新作が登場するのも大燈呂の楽しみのひとつ。今年はクシナダヒメや出世恵美須、干支の午(馬)が新作だったと思います。今回も見事な力作で、昨年・一昨年に造られた作品も登場して、総勢10基くらいの数があったと思います。

なお大燈呂は、神社の前に今年開業した東急ホテルの中で、粟田祭以外の時期も常時展示されています。昼間は光っていませんが、大燈呂が常時目にできるのは嬉しいことです。機会がありましたらご覧になってみて下さい。

今年は12日に例年より1時間早い17時から「夜渡り神事」があり、知恩院の黒門前にある瓜生石まで進み、神仏習合の「れいけん祭」が行われました。見物人が多く大混雑する神事ですが、今年は時間が例年と違ったためか、少し人出は少なかったように思います。それでも多くの方が儀式を見守りました。

瓜生石は知恩院ができる前からあると言われている石で、知恩院の七不思議のひとつとしても知られています。この石に八坂神社の牛頭天王(スサノオ)が降臨して、一夜のうちに石の上に瓜が生えたとされています。また、二条城への抜け道だとか、隕石ではないかという説もある不思議な石。

粟田神社では、約400年前の旧暦9月14日の夜に石の上に瓜が覆い、そこに御金札(金のおふだ)があって光り輝いていたと伝わり、その金札には「感神院新宮(粟田神社の旧社名)」と銘があったため神の降臨であるとして金札は粟田神社に納められ、金札の現れた石が「瓜生石(うりゅうせき)」と名付けられたといいます(粟田神社ホームページより)。このように瓜生石は粟田神社にとって重要な場所であることから、ここで儀式が行われているのです。

「れいけん祭」は、粟田神社と知恩院との合同行事で、神仏習合の儀式形態を色濃く残す祭事です。雅楽や祝詞が聞こえたかと思えば、お念仏も高らかに響き、お坊さんが玉ぐしを奉奠(ほうてん)し、榊を持った神職の後にお坊さんが続いて歩きます。その珍しい光景を見ようと、辺りには多くの方が訪れていました。特に知恩院の黒門が開いてお坊さん方が出てこられる雰囲気は幻想的です。

例年より早い開始でまだ明るいうちから始まりましたが、「れいけん祭」の最中にも日が暮れて、大燈呂も闇夜に浮かび上がってきて、明るいうちとは印象も変わっていきました。「れいけん祭」が終わるとお坊さんは知恩院へと帰っていき、粟田祭の一行は周辺を巡行して21時頃に神社へと戻っていきます。2年前に訪れた時には雨のため、神職のみでの神事でしたが、今年はお坊さんとの神仏習合の儀式を目にすることができました。

ガイドのご紹介 吉村 晋弥

京都検定1級に8年連続の最高得点で合格(通算10回合格。第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。BS朝日「あなたの知らない京都旅」、KBS京都(BS11)「京都浪漫」出演。特技はお箏の演奏。
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