上京区の出水通に面した玉蔵院(ぎょくぞういん)の特別拝観が先日行われました。

2026年は「京の冬の旅」で、3月18日まで出水通の華光寺(けこうじ)、福勝寺が特別公開されています(休止日あり)。また、光清寺(こうせいじ)は2月23日まで公開されていました。

玉蔵院は、同じ出水通にある臨済宗妙心寺派のお寺で、華光寺と福勝寺の間にあります。公開されていたのは2月21日~23日の三連休で、今回は近隣のお寺が公開されるのに合わせ、また長年、京都国立博物館に寄託されていた「芦葉達磨図(ろようだるまず)」(重要文化財)が、100年以上ぶりにお寺に里帰りしての公開が目玉でした。

玉蔵院の創建は寛文11(1671)年で、周辺のお寺では、慈眼寺が寛文3年(1663)に現在地に移転、光清寺が寛文9(1669)年の創建、華光寺が寛文3(1663)年に現在地に移転、福勝寺が宝永5(1709)年に現在地に移転といずれも江戸時代前半に付近に創建または移転しています。

周辺の東側には、豊臣秀吉によって関白の居城として聚楽第が築かれていましたが、甥の秀次が高野山で切腹したことをきっかけに破却されました。京都府埋蔵文化財センターのの資料によると、「破却後の聚楽第跡地は短期間で空き地となり、寛永年間の後半になると居住が許され民家が建ち並ぶようになります。」とのこと。寛永年間は、1624年~1644年ですので、この付近は江戸時代の京都の新開地としてお寺が創建・移転され、現在の景観となっていたのでしょう。

また、開山の一絲文守(いっしぶんしゅ)は岩倉家の出身で後水尾上皇とも親交があって仏頂国師とも呼ばれ、京都では亀岡の法常寺が後水尾上皇の勅願で一絲文守のために建立されています。実は玉蔵院の本寺が法常寺とのこと。他にも一絲文守は西賀茂の霊源寺を開いています。

今回の公開の目玉である「芦葉達磨図」は、中国に禅を伝えた達磨大師が、梁の武帝と対面し法を説こうとするも意が通じないことを悟り、一葉の芦に乗り揚子江(長江)を北上して洛陽を目指した(魏へ去った)という姿を描いた絵で、東福寺の涅槃図を描いたことでも名高い明兆(みんちょう)の筆によります。本来は一艘の小舟のことを「一葦(芦):いちい」と言うことから転じ、達磨大師の神通力を表すエピソードに変わったと見られています。

公開では「芦葉達磨図」は奥の部屋の床の間に飾られ、比較的近くで眺めることができました。達磨大師の足元に芦の葉と水面が描かれているのが特徴で、絵の上部に禅僧の固山一鞏(こざんいっけい)の賛があります。

他にも本堂では多数の絵画を中心とする寺宝が公開されており、すべて撮影可能でした。巨勢金岡(こせのかなおか)の地蔵菩薩画像は本物でしたらすごいものですので、今後の調査が待たれます。「出水の七不思議」のひとつに数えられることもある円山応挙の幽霊画は現在所在不明とのことですが、絵が写っている写真が展示されていました。

また、ご本尊は清水型の千手観音座坐像でした。清水型は手のうちの2本を頭上に掲げて化仏を乗せる姿です(清水寺の像は立像)。驚いたのが光背に多数の手が表現されていること(千手千眼観音なので、手のひらに眼も表現されている)。この形式は、岐阜県にある慈恩寺の像とよく似ており、慈恩寺は平安時代の像で重要文化財です。今回は時間がなく、玉蔵院の像がどういった来歴でいつ頃の仏様なのかを伺うことはできませんでしたが、大変興味深いお姿でした。ご本尊も撮影可でした。

お庭の枯山水も見ごたえがあり、個性的な石塔もあるなど興味深く拝観させていただきました。周辺のお寺の公開もあってか、かなり盛況で多くの方が訪れておられたのが何よりでした。玉蔵院では4月12日の花まつりなど、今後もイベントが予定されています。詳細はホームページをご確認ください。

ガイドのご紹介 吉村 晋弥

京都検定1級に8年連続の最高得点で合格(通算11回合格。第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。BS朝日「あなたの知らない京都旅」、KBS京都(BS11)「京都浪漫」出演。特技はお箏の演奏。
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