10月22日に、鞍馬の火祭が行われました。今年も縁があって「雍州路」さんから間近で火祭を目にすることができました。

鞍馬の火祭は見ごたえのある勇壮な祭りである一方、その混雑ぶりは京都の祭事でも群を抜いています(2025年は比較的空いていました)。10月22日は時代祭もあるため、両方を見ようとする観光客らで叡山電車の出町柳駅は大混雑(近年は海外からの方も多いです)。帰りも鞍馬駅からの電車に乗るために混雑が著しい時間帯もあります。現地も警察官が多数動員されて非常に物々しい雰囲気。道は狭く、思うようにはまず動けませんので、ストレスがたまる方も多いことでしょう。予め十分な覚悟と広い心を持って見に行って下さい。

鞍馬の火祭では、基本的には街道で立ち止まることは許されず、場所取りもできません。警官の誘導に沿って「道を歩き続ける」しかなく、その途中で運よく目の前を松明が通れば見られるというもの。運が悪いとひたすら混雑にもまれて帰ることになります。電車や人出は、神輿が下りて規制が解除されてくる22時過ぎには空いてきますので、無理に帰らずその時間までいるつもりで来られる方がよいかもしれません。

さて、鞍馬の火祭は「由岐(ゆき)神社」の祭礼。平安時代の中ごろ朱雀天皇の折、世が乱れ、反乱や大地震などの天変地異が次々に起こりました。そうした災いを鎮めるために、御所内に祀られていた神様を御所から見て北(鬼門)の方向にある鞍馬の地にお祀りすることになります。宮中から遷す際には鴨川の葦で松明を作り、道中にはかがり火をたいて照らし、鞍馬へとお迎えしたと伝わります。神が現れる時間帯は夜の暗闇が基本で、現在の鞍馬の火祭はこの神迎えの行列を再現する意味合いを持って、夜に行われます。

18時になると「神事(じんじ)ぶれ(触れ)」と呼ばれる少年が「神事にまいらっしゃ~れ~」との掛け声で街道を進み、家々の前の松明に火が入って、神事が始まります。今回は鞍馬寺の山門下にある「雍州路」さんにて、まいまい京都さんの団体のご案内をさせていただきました。ちょうど神輿が置かれている場所の前で、通常は立ち入れない場所から貴重な祭りの様子を目にすることができました。鞍馬寺の山門下に安置された神輿の前からも「神事(じんじ)ぶれ」の少年が出発をしていきました。

やがて子どもたちの松明が街道を行き交います。松明は子どもたちの「とっくり」と呼ばれる小さなサイズから大人が担ぐ100㎏クラスの大松明(甲斐性松明)まで、だんだんと大きくなっていきます。「さいれいや さいりょう(祭礼や最良または祭礼や祭礼)」の掛け声も響き渡り、お祭りの雰囲気が高まって行きます。

今回は見ていませんが、20時になると剣鉾や鉦の音色とともに大松明が御旅所に進んできます。大松明は御旅所の中で何本も立てられ、祭りの中でも盛り上がる場面。近くだと炎の熱も大いに感じられるでしょう。独特の雰囲気の中でしめ縄が切られます。

御旅所でのしめ縄切りが終わると、大松明らはさらに北にある鞍馬寺の山門下の階段へと進んでいき、大変勇壮なハイライトを迎えます。「雍州路」は山門下の階段の上にあって、階段の途中に張り出した仮設の足場を設けて下さっており、目の前で松明の熱気のすごい迫力を見ることができます。通常の観光客は山門から離れた場所で警察の規制線が引かれて身動きが取れなくなるため、山門下での松明や、その後神輿が階段を降りる際に行われる「チョッペン」を見るのは至難の業です。雍州路さんはまさに特等席といえる場所でしょう。

街道の下手や上手から集結した大松明が鞍馬寺の石段に建てられると、熱気は最高潮で、火の粉が飛び散り「さいれいや さいりょう」の掛け声にも一層の力が入ります。石段に立てられた松明は、掛け声とともに順次石段下で燃やされていき、大松明がすべて燃やされ準備が整うとしめ縄切りが行われ、さらに神輿の前で神事を行います。神事の場面は一般の方からはほぼ見えない位置になります。

神事が終わるといよいよ神輿が下りて来ます。神輿が階段を降りる際に行われるのが「チョッペンの儀」。若者が長柄の先端に逆さ大の字にぶら下がり、下から支えられながら階段を下りてきます。このチョッペンを見るのは例年難しいのですが、雍州路さんは階段のところに仮設の足場を設けており、もちろん他のお客様との兼ね合いもありますが、目にするチャンスはあります。チョッペンはかつての鞍馬の成人儀礼の名残ともいわれますが、とある文献で読んだ、階段を下す際に神輿をできるだけ水平に近づけるために人の体を挟んで持ち上げるのだという理由は納得感があります(真偽のほどは不明)。神輿の後ろでは女性陣が綱を握ってブレーキをかけています。

石段での「チョッペンの儀」を経て神輿が下りたあと、神輿は鞍馬の上(かみ)の方へと巡行し、やがて戻ってくると神楽松明を引き連れて御旅所方面へと向かいます。神輿は御旅所を通り過ぎて下(しも)のエリアを巡行し、やがて御旅所へ戻ってきます。今回は御旅所までは見ずに鞍馬を後にしました。今年は比較的空いていたと思いますが、やはり歩きながら見るというのは相応にしんどいため、覚悟は必要です。帰りは神輿が石段下を降りる22時過ぎまで鞍馬にいる心づもりですと徐々に電車も空いてきます。

今回私が雍州路さんで見たように、有料ではあっても拠点を確保してみることができる場所は貴重かと思います。初めは祭りの段取りをよくわかっている方と一緒に訪れて頂くとよいでしょう。機会がありましたら、鞍馬の火祭の勇壮な炎をご覧になってみてください。

ガイドのご紹介 吉村 晋弥

京都検定1級に8年連続の最高得点で合格(通算10回合格。第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。BS朝日「あなたの知らない京都旅」、KBS京都(BS11)「京都浪漫」出演。特技はお箏の演奏。
京都旅屋の「LINE公式アカウント」を作成しました!
散策・講座の最新情報を配信します。

散策・講座のお知らせ
【散策を受付中!】
11月10日(月) 13時~15時30分頃+α
摂関政治に思いを馳せる 平安時代の天皇陵・火葬塚めぐり
【紅葉講座2025年を受付中!】
11月8日(土)18時30分~20時45分頃
京都の紅葉講座 2025年 吉村のおすすめスポットを解説!
【講座を受付中!】
10月29日(水)14時~、18時30分~「永観堂」
奥深い京都へのいざない!マニアック京都講座
【過去の講座動画の販売を再開!】
講座動画販売ページはこちらから。
【まいまい京都さんで散策受付中!】
11月16日(日)9時~12時頃
【泉涌寺】紅葉と菊が織り成す格式高き御寺、古刹を彩る秋絵巻
11月16日(日)14時~16時30分頃
【紅葉ミステリー・東山編】紅葉を知り尽くした吉村と、その日一番の紅葉へ!
11月24日(月)7時30分~10時頃
【天龍寺】息を呑む美しさ、錦繍の嵐山と天龍寺の早朝参拝
11月29日(土)9時15分~12時頃
【鷹ヶ峯】本阿弥光悦が築いた芸術の拠点、古建築を移した錦秋の巨大庭園へ
11月29日(土)14時~16時30分頃
【洛北】京都中の社寺を巡った吉村の“推し寺”へ!比叡山を望む借景庭園へ
【オンラインサロン】吉村晋弥のマニアック京都サロン を募集中!
「まいまい京都」さんで『【オンラインサロン】吉村晋弥のマニアック京都サロン』を募集中。毎月第2水曜日20:00~21:30頃の配信と吉村のコースの抽選が当たりやすくなります。詳細はリンク先をご覧下さいませ。
