建仁寺の塔頭・正伝永源院が特別公開中で、現在はキリシマツツジが見ごろです。
寺は元は正伝院と永源庵の二つの寺でした。正伝院は鎌倉時代に創建後、荒廃しましたが、信長の弟である織田有楽斎(うらくさい)が再興し、茶室・如庵を創建。有楽斎は正伝院で天寿を全う、墓も残されています。茶室・如庵は有楽斎の代表的な茶室で国宝。現在は愛知県の犬山に移築されています。実は、明治初期の廃仏毀釈の折り、正伝院の土地は上げ地となり、建物は売却の上、そのお金の寄付を強要され、如庵は一般に払い下げられてしまったのです。やがて明治41年に三井家の手に渡り、最終的には昭和47年に犬山の現在地に移されています。
現在の正伝永源院には、如庵を忠実に模した茶室があります。平成8年に完成したもので、「如庵」の額は細川護貞氏の揮毫。実は、永源庵のほうが細川氏の代々の菩提寺で、廃仏毀釈の際に永源庵が廃寺となり、その土地に正伝院が移ってきた後、時の侯爵である細川家の由緒により名前だけが正伝永源院として残されることになりました。苦難の歴史を持つお寺です。
本堂(方丈)の中央の部屋(室中)には狩野山楽の蓮鷺図が残り、人の一生を蓮の花で表現をしています。有楽斎の像も生き写しのように見せて頂くことができました。そして、左右の部屋には細川護煕氏が絵を描いた襖がはまっています。山楽の絵と、細川護煕氏の絵が同じ建物で見られるというのもこちらだけでしょう。
春の今の時期は新緑が美しいのに加え、深紅のキリシマツツジが咲いて色彩のコントラストが見事。盛りは過ぎつつありますが、今週末にかけて見ごろが続きます。この機会にぜひ足を延ばしてみてください。なお、今回はNHK文化センターの現地講座で訪れました。ご参加ありがとうございました。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2016」監修。特技はお箏の演奏。