山科にある随心院では梅園が公開され、はねず色の梅が綺麗に咲いていました。
随心院のある「小野」の地は、小野氏ゆかりの土地で、平安時代には小野小町が住んでいたとも伝わります。随心院には、小町がもらった恋文を埋めたという文塚や、文を張り付けたという文張地蔵があり、化粧井戸や、老年の小町の像(卒塔婆小町坐像)までもが存在しています。毎年秋にはミス小野小町コンテストも行われ、3月の最終日曜日に行われる「はねず踊り」は大勢の人で賑わいます。
ただ、今年は新型コロナウイルスの影響ですでに「はねず踊り」の中止が決まっています。大変残念です。一方、境内には小野梅園と呼ばれる梅園があり、こちらは例年通り公開されています。入園料は500円、拝観もされる場合は800円です。今年は梅の開花が早いものの、薄い紅色の「はねず色」に咲く紅梅がまだ綺麗に花を咲かせていました。やはり梅の香りは現地でないと感じることができません。心和む空間でした。
なお「はねず(朱華)」の色は古くからある色で、庭梅(ただし江戸時代に渡来)やザクロの花の色(ザクロの花はもっと赤い)、あるいはユスラウメの花の色ともされますが、その昔はこの色の染め物は色落ちしやすかったことから、万葉集に載る大伴坂上郎女の「思はじと 言ひてしものを 朱華(はねず)色の 移ひやすき 我が心かも」のように、移ろいやすいものを表す言葉でもありました。小町の心はどうだったのでしょうか。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
京都検定1級に3年連続最高得点で合格(第14回~第16回、第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として10年以上。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2020」監修。特技はお箏の演奏。