4月17日に伏見稲荷大社のお祭り「稲荷祭」の神幸祭が行われました。お神輿の巡行といえば、人が手で担ぐイメージがありますが、稲荷祭の神幸祭と還幸祭は、トラックの荷台に乗せられて神職や神輿が巡行していきます。
現在、京都三大祭りといえば、祇園祭・葵祭・時代祭を差します。ただ、かつては祇園祭・葵祭・稲荷祭だった時代もあります。平安時代に起源を持つ稲荷祭は、室町時代には祇園祭と並ぶほどの大きな祭りとして、50もの山鉾を連ねるほど盛大だっと伝わります。しかし時を経て、第二次大戦後には規模を縮小、1962（昭和37）年からは、ついにトラックで神輿が巡行する形となり、現在に至っています。
伏見稲荷大社の境内地は、かつては藤森神社の境内であったため、稲荷の氏子圏は、実は伏見稲荷大社の周辺にはなく、十条周辺から北、松原通にかけてにあります。稲荷祭のお神輿がトラックでの巡行になったのも、こうして神社と氏子圏が大きく離れていることも理由の一つだという見解もあります。
お神輿は稲荷の五神（宇迦之御魂大神（下社）、佐田彦大神（中社）、大宮能売大神（上社）、田中大神（下社摂社）、四之大神（中社摂社））に対応して、五基が出ています。かつての稲荷祭は「うま（午）うま行って、う（卯）かうか帰る」といわれ、4月第2の午（うま）の日に神幸祭が行われて御旅所に神輿が入り、神輿が帰る還幸祭は、5月の初卯（う）の日に行われていました。しかし時代は変わり、現在は4月20日に最も近い日曜日に神幸祭が行われ、5月3日に還幸祭が行われています（いずれもトラックでの巡行です）。
トラック巡行とはいえ、さすがに伏見稲荷大社。その台数は十数台にも上る「立派」な巡行です。神職もトラックに乗り、雅楽もトラックの上から奏されます。なかなか他では見ることのない、大規模なトラック巡行です。御旅所では、神職らはいったん鳥居前を通過して油小路通でトラックを下りて御旅所に入りますが、お神輿はトラックのまま御旅所へと入って行きます。トラックは、神輿が安置される奉安殿にそれぞれ着けられ、トラックからは人の手で移されていきました。やはり重いものですので、力を合わせて動かす必要があります。神幸祭の一部始終は動画もありますので、ご覧になってみて下さい。
余談ですが、お神輿を運ぶトラックは「日通」が担当しています。日本通運は文化財輸送の長年のノウハウがあり、私も学生時代の実習で日通の方から文化財の梱包の仕方を教わりました。御旅所でも、日通の方のテキパキとした動きが印象的でした。
現在は、神幸祭の一週間後の日曜日に、氏子祭（巡行祭）が行われ、この時は氏子が神輿を担いで行きます（今年はすでに終了）。神輿は5月3日まで、油小路八条下る（正確には、東寺通油小路西入る）の御旅所に鎮座しています。この期間は、伏見稲荷大社ではなく、御旅所に出向いて祈願されてもよいでしょう。京都駅から歩いて東寺に行かれる際には、是非お立ち寄りください。
日々の京都情報を発信するFacebookグループを始めました！
- Facebookのグループ機能を利用したページ内で、ブログでは未公開の写真や動画、私が眺めている日々の京都の風景や、行事の見学ノウハウなどを月額680円で公開中。詳細やお申込みはこちらから。運営をされているシナプスさん経由のお申込みとなります。
散策･講座のお知らせ
※散策・講座等のご依頼はこちらから！お気軽にご連絡ください。
- 4月27日（水）【講座を受付中！】
京都の定番スポット徹底解説！秘められた人々の思いと物語 その1・清水寺 - 4月28日（木）【受付中！】
新緑が包む真田信之の菩提寺 妙心寺・大法院とキリシマツツジの大心院 - 4月30日（土）【受付中！】
洛南の藤巡り！城南宮と鳥羽水環境保全センター - 4月30日（土）【講座を受付中！】
貴重な動画と写真で知る京都の有名行事 その1・葵祭 - 5月15日（日）【受付中！】
御所で眺める優美な「葵祭」 吉村とっておきの見学場所へ
ガイドのご紹介
吉村 晋弥（よしむら しんや）
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2016」監修。特技はお箏の演奏。