伏見稲荷大社の初午と「しるしの杉」

今年は2月1日が伏見稲荷大社の初午(はつうま)大祭でした。

伏見稲荷大社

初午大祭は、伏見稲荷大社の神が鎮座した「2月初午」の日に行われます。そのため日付は毎年変わり、2026年は2月1日でした。稲荷の神は、和銅4(711)年の2月初午の日、稲荷の三ヶ峰に降り立ったといい、以下の伝説が伝わります。秦氏の一族で大富豪だった秦伊呂具(はたのいろぐ、秦伊呂巨:はたのいろこ)が、弓矢で遊んだ時、手近に的になるものが無かったので餅をこねて的を作り、矢を射かけました。すると、餅は3羽の白い鳥に姿を変え、彼方の山に飛び去って行ったのです。

伏見稲荷大社

白い鳥が飛び去った後、どういうわけか秦伊呂具の家は日に日に貧しくなっていきました。ついには生活にも困るようになった秦伊呂具が陰陽師に占わせたところ、陰陽師は五穀の神の祟りであると告げました。伊呂具には思い当たる節があります。そうです、大切な食料である餅を、あろうことか的にして矢を射かけたのです。伊呂具は慌てて、白い鳥が飛び去った東の山へと登り峯を探すと、3つに分かれた峯にそれぞれ稲が成っていました。

伏見稲荷大社

伊呂具は、これは神がなしたことだと思い、その地に社を建てて祀り、稲荷社が創建されました。稲が成ったところからイネナリ→イナリと呼ばれるようになっていきます。一方で、以後伊呂具の家は貧しくなってしまったため、子孫は山から杉の小枝を持ち帰り、自らの家に祀りました。やがて杉の枝には根が生じ、杉が成長するにつれ、再び家も栄えて元の富豪へと戻っていったということです。こうした由緒から、古くから稲荷詣での際には杉の枝を持ち帰る風習があり、特に参拝者で賑わった初午の日には稲荷山の杉の木からすっかり葉が無くなってしまったという歌まで残されています。

伏見稲荷大社

現在の伏見稲荷でも2月初午の頃に、縁起物の「しるしの杉」が授与されており、商売繁盛・家内安全のお守りとして多くの参拝者が買い求めていきます。まさに初午の日に参拝した「しるし」ですね。本来はこの杉を庭に植え、根付かせるのが習わしだそうですが、現在は御幣として飾るものとなっています。しるしの杉にはオカメさんのような顔も付いていて、これは「巫女」だとか稲荷三神の「大宮能売大神(おおみやのめのおおかみ)」だといわれています。個人的にも一本手に入れました。京都旅屋の発展を祈願したいと思います。

伏見稲荷大社 しるしの杉

さて、昔は初午の日の前日から賑わっていた初午大祭。外拝殿には奉納されたお酒がズラリ。さらには野菜や果物といった生鮮食品が山盛りに並べられています。それにしても、ものすごい量の奉納の品々。今も昔も変わらぬ信仰なのでしょう。

伏見稲荷大社

ガイドのご紹介 吉村 晋弥

京都検定1級に8年連続の最高得点で合格(通算11回合格。第14回合格率2.2%)、「京都検定マイスター」。気象予報士として20年。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。BS朝日「あなたの知らない京都旅」、KBS京都(BS11)「京都浪漫」出演。特技はお箏の演奏。

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