「京の夏の旅」で、御所の西にある有栖川宮旧邸「有栖館」が公開されています。
9月30日まで行われている「京の夏の旅」の特別公開。御所の西の烏丸通に面して建つ有栖川宮旧邸も公開されています。有栖川宮旧邸は現在は平安女学院の所有で有栖館と呼ばれ、これまでは春と秋の御所の一般公開に合わせて公開されてきました。烏丸通からは銅板葺の門が目立ち、春には美しい枝垂れ桜も目を楽しませてくれます。今回は夏の公開とあって、これまでとは違ったお庭の雰囲気も感じられます。
有栖川宮家は、江戸時代のはじめ寛永2(1625)年に、後陽成天皇の第七皇子である好仁(よしひと)親王によって創設されました。有栖川宮家は、伏見宮家、桂宮家、閑院宮家とともに「四親王家」と呼ばれ、大正時代まで続いた宮家です。大正時代に絶家とはなりますが、その祭祀は高松宮に引き継がれています。また、歴史上では有栖川宮熾仁(たるひと)親王が有名です。和宮の婚約者でもあった熾仁親王は、明治新政府が鳥羽伏見の戦いを制し、江戸へと攻め上る際に東征大総督となって東海道を進軍していきました。京都では、八坂神社南門の扁額も熾仁親王の字によります。
有栖川宮の邸宅は、かつては御所の建礼門の前にあり、明治初期には京都裁判所の仮庁舎としても使用されました。1891年に現在地に移築されると、旧京都地方裁判所の所長宿舎の一部として2007年まで使用されていました。2008年8月になって平安女学院が取得し、庭園等も新たに整備をし、有栖館として特別公開されるようになりました。
さて、旧邸に入るとまず広々とした客間を見学します。客間の手前側は、板張りとなっていて能舞台としても使用できるのだそうです。奥側は畳が敷かれた和室となっていて、付書院を持つ「上段の間」も設けられています。欄間の彫刻や窓の形などが、宮家の趣を伝えています。また、パネルでの展示もあり、有栖川宮の歴史についても分かるようになっていました。
客間の南には、2009年に整備された庭が広がっています。十一代目の小川治兵衛氏によるもので、「平成の植治の庭」とも呼ばれているそう。元の庭に土を入れてかさ上げし、石材も様々な形を持った多彩な構造のお庭です。奥には平安女学院の赤レンガの建物も見えて、お庭にうまく溶け込んでいます。客間から座って眺めることもできますね。
客間から中庭を望む廊下へと進みます。中庭には紅白の花を咲かせる「源平しだれ桃」の大きな木があって目を引きます。咲けばさぞ美しいのでしょう。その奥の和室では、平安女学院の制服の変遷なども展示されていました。平安女学院は、日本で初めて女学生の制服にセーラー服を採用した学校です。時代は大正9(1920)年のことでした。
最後に山田松香木店のお香が展示されている和室を見て玄関に戻るという見学コース。帰り際の和室には油絵で描かれた舞妓さんの絵があり、目を引きました。現代画のようですが、詳しいことはわかりません。普段じっと舞妓さんを見る機会もありませんので、こうした絵もいいものだなぁと思いながら見させて頂きました。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。「京ごよみ手帳 2016」監修。特技はお箏の演奏。