気まぐれな花 律儀な花


「萩の寺」として知られる、常林寺の花が見ごろを迎えつつあります。
植物にも人間と同じように「性格」があるようです。花の開花には、桜のように毎年決まった時期に咲いてその予想もしやすい「律儀」なものと、萩のように毎年「気まぐれ」に咲いて予測が難しいものとがあります。

生物季節観測

気象台は天気予報だけでなく「生物季節観測」なるものを長年続けています。生物の動向から季節を読み解き、統計を重ねることで気候の変化を計ろうとしています。観測項目は植物から昆虫や渡り鳥など多岐にわたっていますが、近年人を配置する気象官署が減っているため縮小傾向で、できれば今後も続けてほしいと個人的には思います。

さて、気象台が観測しているのは「ヤマハギ」です。生物季節観測の対象は、全国的に分布しているものが選ばれ、萩も例にもれず全国的に見られる植物になります。具体的な開花日からハギの「気まぐれ」を見ていきましょう。

萩の気まぐれ

京都の2011年のヤマハギ開花日はなんと6月21日。実はもう3か月も前に「開花宣言」は出されていたのです。これは2008年に観測された6月14日の歴代最早記録に匹敵する早さ。一方の遅い方では、昨年(2010年)の9月22日が記録的で、1983年の9月23日に匹敵します。ということで、最も早い年と遅い年では3か月以上も開花時期に差があります。

もし桜が3か月も開花時期がずれるような花であったらどうでしょう。お花見の時期の季節感が毎年違ってきて大変ですね。京都の桜開花の最早は2002年の3月20日、最晩は1984年の4月9日と僅かに20日ほど。桜が広まっているのは、毎年決まった時期に咲いてくれるその「律儀」な性格によるところも大きいのでしょう。ただし、気象台が観測しているのはあくまで「開花」。見頃となる「満開」はまた別の話です。

開花から満開までの期間はさらに複雑で、桜の場合は「開花から満開までは一週間」とテレビなどでは言われています。しかし、これは人口が多い本州での一般的な話。北国へ行くほどその期間は短くなる傾向にあります。例えば札幌では開花から満開までの平均は4日、驚くべきは開花の翌日に満開になるという記録も残っていることです。数日外に出ないだけで、別世界になってしまいますね。北国では春はまとめてやってくる傾向にあり、北海道では梅と桜が同時に咲くのが一般的。長く厳しい冬があるぶん、一気に押し寄せる春の彩はさぞ感慨深いものなのでしょう。私も機会があれば体感してみたいものだと思います。

他の植物では、アジサイや山吹、イチョウや楓の色づきも「律儀」なグループに入ります。一方の「気まぐれ」グループには、椿やススキ、タンポポなどが入ります。開花を考える際の参考にしてみて下さい。

萩の性格は「気まぐれ」とは書きましたが、今年の満開は概ね季節通りにやって来てくれそうです。開花が早くとも満開がいつも通りとはまさに「気まぐれ」。京都では各地で萩にまつわるイベントも行われます。常林寺や梨木神社では萩に囲まれた道を歩くことができ、涼しい空気に覆われれば非常に秋らしい風情に包まれ、皆を笑顔にしてくれることでしょう。しばらく天気が悪そうですが、気まぐれ者がきちんと見ごろを合わせてきた姿を見に、足を運んでみて下さい。※17日追記。市内の萩は全体的にまだ見ごろとは言い難いのでご注意ください。

なお、明日17日常林寺などの萩のお寺や大河ドラマ「江」の供養塔を散策します。天気はあいにくそうですが、よければお越しください

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として9年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。散策メニューはこちらから

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