八坂神社 草鹿式 2011年


30日は、八坂神社で草鹿(くさじし)式が行われました。草鹿式とは、細かな作法を守りながら鹿の形をした的を射る行事です。

この行事、残念ながらあまり知られていないようで、京都の行事案内をしているサイトでもほとんど見かけませんでした。ということもあり、観客もたまたまその場に居合わせた方々がほとんどで、私のように熱心に写真を撮っている人も見かけませんでした。京都でも有名な八坂神社での行事でしたが、よい場所をウロウロしながら撮影が出来ました。

草鹿式の由来は鎌倉時代の初めにまでさかのぼります。鎌倉幕府の将軍・源頼朝が富士の裾野に狩りに出かけた際、獲物を射とめることがうまくいかず「どうすればよいか」と家人(家来)に訪ねます。そこで頼朝の弓や馬の師範であった小笠原長清は武田氏とも協議し、皮で草を包んだ鹿の形の的を用意して稽古をすることを考案しました。当時は狩りの練習として馬に乗った草鹿式が行われていたそうです。

八坂神社で草鹿式を奉納されるのは小笠原流の皆様。約20m離れた場所の鹿の的を射るのですが、単に当てるだけではダメ。的中と判定されるには24カ所ある鹿の模様のような「星」の場所でなければなりません。さらには射る前から射終わった後にまで細かな作法に則る必要があり、手順を間違えると的中が取り消されるという厳しさです。しかし、やはり日ごろから稽古をされている皆様。思っていた以上にきちんと当てており素人の私はその技術の高さに驚かされました。射ている様子などは動画もありますので、最後にご覧ください!!

何より面白かったのは、当たりを判定する的奉行と射手との問答。的には当たっても当たりと即座に判定してもらえないことも多く、射手は矢取りが矢を拾い上げる前に引き留めて、的奉行に問答を願い出るのです。例えば「星」に当たっても矢の跳ね返りが大きいと、当たりとは判定されずに問答へと持ち込まれます。具体的には、的に対して横に弓一張り、縦に弓二張り分の幅に入っている必要があり、問答では的奉行が射手の弓を借りてその幅を見定め、当たり扱いか外れ扱いかを検証します。

他にも射手が「良き矢(当たり)」だと主張すると、的奉行は「ならば矢所(当たった場所)は?」と訪ね、それが間違っていると的中にはならないといったものもありました。さらには当たっても「矢の落ち方が悪い」ので当たりにはならないとか、一旦当たりとは判定されなくても、八坂神社の神様に対して「まぎれもなき良き矢であった」と誓いの言葉を述べることで、当たりになるなど、意外なルールも様々にありました。作法違反は今回はなかったようですが、足の運び方やその歩数に至るまで、立ち居振る舞いの所作には全て決まりがあるようで、射手は最後まで気の抜けない緊張感があるのでしょう。

さて、八坂神社の草鹿式は単に個人技で当たりを競うのではなく、先に射る前弓と後から射る後弓とのチーム戦で行われます。前弓と後弓とでは作法も違うそうです。まずそれぞれ5人が2本ずつの弓を射ます。そこで5本以上の差がつけば終了ですが、差が4本以下ならば大将戦に持ち込まれるのです。大将は1本の当たりが2本分の当たり扱いとなるため、逆転も可能というわけです。さて、勝負の行方は!?Facebookの方にて勝負の行方が分かるように写真をまとめましたのでご覧ください。また、実際に弓を射たり問答をしている場面は動画を是非ご覧ください。ルールが分かると面白いですよ。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。散策メニューはこちらから

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