天龍寺と宝厳院の紅葉


30日は嵐山にある世界遺産・天龍寺と、その塔頭で紅葉が大変美しい宝厳院(ほうごんいん)へと行ってきました。

天龍寺の紅葉

市内各地で紅葉が見ごろを迎えています。「今年の紅葉はいまいち」「庭の中でも木々の色づき具合がバラバラ」という声も聞かれはしますが、こちらの天龍寺や宝厳院はそのような心配は全くありませんでした。境内全体が真っ赤に色づき、まさに紅葉は最紅潮。

紅葉情報の「見ごろ」の判定の範囲は、だいたい6分から11分(10分以上は散り始める)程度とも言われており、それなりの期間があります。ただ、見ごろ中でも最高の「見ごろ中の見ごろ」は3日程度と聞きます。私も毎日同じ場所の紅葉を見てはいませんので、本当のところは分かりませんが、今回の天龍寺はまさにその「見ごろ中の見ごろ」の時期という印象を持ちました。

境内の紅葉は本当に真っ赤。垣根の山茶花も咲き、非常に華やかな光景です。当然人でにぎわっていますが、境内はまずまずの広さがあるため、この日は本堂でもゆっくりと眺めることができました。庭園拝観は500円、本堂拝観も含めると+100円です。本堂(書院)では畳に座ってゆっくりとお庭を眺められ、障子の枠が額縁のようになる景色も見られます。さらには渡り廊下を通って、後醍醐天皇の像が祀られている多宝殿へも行くことができますので、お時間の許す方は是非、本堂拝観も加えることをお勧めします。

方丈から見える池は曹源池(そうげんち)と呼ばれ、周辺の庭は国の史跡・特別名勝に指定されています。今から約650年ほど前、室町時代の初めに、当時の高僧であり作庭にも秀でた・夢窓疎石(むそうそせき)が作ったお庭。京都では他にも苔寺(西芳寺)がよく知られています。曹源池庭園は創建当時の面影を残すとされ、石の滝組とその前にかかる日本最古ともいわれる石橋が見どころです。庭は嵐山と亀山も借景としており、スケールの大きさを感じることができるでしょう。

なお、京都の世界遺産は「国宝建築」「国の特別名勝」が一つの基準となっています。国の特別名勝は「庭の国宝」とも呼ばれる最高位。京都の世界遺産の社寺には必ずこのどちらかがありますので、何が世界遺産の所以なのかを訪れる際に意識をしてみても、楽しみが広がるかもしれません。なお、天龍寺は創建以来8回もの火災にあい、現在の建築は明治期に再建されたものです。

さて、紅葉のお勧めは少しわきにそれた場所にある「東司」周辺。東司(とうす)は禅寺での呼び名で、おトイレのことです。用のない方は行かれないかと思いますが、付近はまさに紅葉のトンネル!そして東司から本堂方面に戻らずさらに奥へと進めば、苔がたいへん美しい一角が現れます。もちろん真っ赤な楓もあり、木漏れ日が演出を加える世界は見事の一言。少しの寄り道が、人も少なく紅葉も苔も美しい場所へと続いて行きますので、散策コースに加えてみて下さい。

天龍寺では、4日までは朝7時半からの早朝拝観も行われています。天龍寺のそのほかの紅葉の写真は、こちらからご覧いただけます

宝厳院の紅葉

さて、ようやく宝厳院。こちらは天龍寺のすぐ近くで、境内の楓の素晴らしさは、前を通れば伝わってくることでしょう。中は天龍寺境内をしのぐ楓の宝庫。仏が説法する様子を意味する「獅子吼(ししく)の庭」と呼ばれています。前半は石庭とドウダンツツジなどで割と静かに始まりますが、後半はもう皆さん「すごい!」「きれい!」の言葉がどんどん出てきます。それだけ楓や置かれている巨石、苔や庭の作りが美しい。天龍寺と併せて拝観頂くとよいでしょう。宝厳院のお昼の紅葉の写真は、こちらをご覧ください

宝厳院では夜にライトアップも行われています(4日まで)。ライトアップでは昼間とはまた異なる印象を与えてくれますが、やはりお庭の後半部分で空を覆う楓は人気が高く、皆さん歓声をあげておられました。私が行った日にはテレビの放送か撮影もあったようで、クルーが多人数で訪れていました。寒さ対策を万全にして、機会があれば一度はご覧になって下さい。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

より大きな地図で 天龍寺と宝厳院 を表示

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