吉田神社の追儺式(鬼やらい神事)


3日は節分。その前後の日も含め、京都各地の社寺で節分の行事が行われました。ユニークな行事を何カ所も見てきましたので、順番に紹介していきたいと思います。今回は2日に行われた吉田神社追儺式(鬼やらい神事)です。

吉田神社の節分祭は京都でも有名で、多くの参拝者で賑わいます。追儺式は、鬼やらい神事とも呼ばれています。古くから宮中で行われていた行事を、古式に則って再興したもので、三匹の鬼を、矛と盾を持った「方相氏(ほうそうし)」が追い払います。開始は18時からですが、前で見るためには2時間ほど前には行かれて、本殿向かって左手側で場所をとって待たないと難しいでしょう。

私は2時間以上前に訪れたところ、鬼たちが参拝をしている場面に遭遇しました。鬼やらいに登場するのは赤・青・黄の鬼ですが、この時は「緑鬼」も見ることができます!ただ、今回は写真が撮れませんでした。鬼たちは子どもたちには恐怖の存在のようで、見つけると泣いてしまう子もたくさん見かけました。

今回は、運よく最前列を確保できました。本殿前での式の様子は後ろの方から見えにくいため、競争率の高い場所取りです。ただ、参道沿いでならばもっと後からでも大丈夫です。この日(2日)は、今シーズン一番の寒さ。気温は夕方の5時で既に氷点下まで下がってしまいました。2時間待ちは、テーマパークの人気アトラクション並みですね(笑)しかし、その甲斐あってか、貴重な写真や「鬼がカメラにぶつかってくる映像」も撮ることができましたので、いずれどこかで京都講座を開く時にでも、面白おかしく話もできることでしょう。動画はこのページの最後にありますので、是非ご覧ください。

18時になると、鬼を追い払う方相氏(ほうそうし)らが本殿前に入り、陰陽師が大祓いの祝詞を唱えます。方相氏は中国伝来の呪術師で、金色の目を4つもった面をかぶり、神通力のある矛と盾を持って、矛を地面に打ち鳴らし大きな声を出しながら宮中を厄除けのために歩いたそうです。4つの目は、人間の目には見えない邪気を見つけ出すといわれています。方相氏を見ていた子どもは、その形相から「鬼や!」と声を出していました。実はあながちその印象も間違っていないようで、この方相氏、最初は鬼を追う存在でしたが、やがて自らが鬼として追われる存在に変わって行ったそうです。本来の役割も時代とともに忘れ去られて行ったのでしょうか。

さて神事の後、鬼が唸り声をあげて堂々と入ってきました。鬼は疫病の象徴で、その鬼=疫病を退散させる鬼やらいは、一年の境目でもある立春の前日の節分に行われ、厄を祓って新年を迎える行事。今から1300年程前の文武天皇の時代に、様々な疫病が流行った際に始められました。その後、一度鬼やらいの行事をやめたところ、再び疫病が流行ってしまったため、以後は宮中の大切な行事として行われるようになります。なお、鬼の姿は「鬼門」である「丑寅(北西)」の方向からの連想で、牛の角を付け、虎の革のパンツをはいています。

吉田神社では、赤鬼は世の中の諸々の怒りを現わし、青鬼は同じく悲しみを、黄鬼は同じく苦しみを現わしています。鬼たちの唸り声の演技も迫真で、暗がりの中で子どもたちはさぞ恐ろしかったことでしょう。あちこちで悲鳴も聞こえました。鬼たちは見物客を驚かしながら舞殿を回り、方相氏を挑発するようなしぐさを見せます。最初は静観していた方相氏も、それを見かねたのか矛と盾を打ちならして鬼をやっつけにかかります。鬼たちもこん棒を振りかざして方相氏に立ち向かいますが、方相氏の「うぉ~!」という大声とともに、見えない威力にやられて後方へと吹き飛ばされて行きます。方相氏につき従う「侲子(しんし)」という子どもも、勇ましい掛け声をあげて鬼を追い詰めます。その様子には、怖がっていた子どもたちも、きっと頼もしさを覚えたことでしょう。

やがて鬼は弱りきって退散していきます。そして止めとして、殿上人が桃の木で作られた弓で葦(よし)の矢を放って鬼を完全に追い払います。桃は、中国では神聖な果物とされ、葦とともに魔力を封じる力があるとされています。こうして退散した鬼たちは大元宮へと向かいますが、こちらでも追い払われて、最後は竹中稲荷神社まで帰って行きました。鬼は見ている人が少なくなっても、最後まで唸り声をあげて、暗闇の中に響く声は、なかなか恐ろしい雰囲気を醸し出しています。竹中稲荷神社での関係者の記念写真の後は、鬼たちの写真を撮らせて頂けました。実は気前のよい鬼たちです。

さて、鬼やらいの行事は以上で終わりですが、吉田神社の節分祭には他にも見どころが満載です。3日深夜に行われる火炉祭では、多くの方から納められた古いお札類を燃やします。この大きさが人の背丈の3人分はあろうかというほどの巨大さで、壮大なスケールの火祭り。今年も見てきましたので、後日改めてご紹介したいと思います。また、吉田神社では福豆が200円で販売されていて、付いているクジの景品(企業から奉納されたもの)が豪華です。なんと車も当たるほど!!クジの付いている福豆は各地の社寺で配られていますが、吉田神社はその中でも粒ぞろいですよ。

全国八百万(やおよろず)の神々が祀られている大元宮では、内陣も公開されます。正面に立つ厄塚は人々の厄を代わりに負ってくれるとされ、大勢の人が参拝に足を運び行列を作っていました。境内にはお店も立ち並んで、たいへん賑やかですので、是非一度訪れてみて下さい。実は私が記憶にある中で最初に京都に来たのは、この吉田神社の節分祭の時で、小学校三年生でした。およそ20年の時を経て、同じ場所に立てていることをとても嬉しく思います。願わくば20年後も、お客様をご案内しながら立っていたいものですね。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

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