穀雨の京都 京都旅屋1周年


4月20日は二十四節気の一つ、穀雨(こくう)です。京都では朝から穀雨にふさわしく、穀物を潤すような優しい雨が降りました。また、京都旅屋を始めてから、ちょうど1年を迎えます。お客様を始め、京都旅屋に関わって下さった全ての方に厚く感謝いたします。

清明と穀雨の春

桜に夢中になっている間に、清明(せいめい)の節気を飛ばしてしまいました(笑)語感からも雰囲気が伝わる素敵な節気ですね。春になって色とりどりの花が咲き、万物が清々しく明るく美しくなる頃です。「爽やか」が秋の言葉ならば、「清々しい(すがすがしい)」は雨にきらめく新緑や花が清らかに美しい、春から初夏の言葉。低い雲が立ちこめて暗い冬の空から、空が開き光が明るい春へと移り変わります。雪が雨へと変わることで再び虹も見られるようになりますが、太陽の高さが高いと反対に虹は地平線に近く低くなり、また真昼には太陽が高すぎてそもそも見られなくなるなど、春の虹は案外見つけるのが難しいです。桜と虹を同時見ることが出来た方は、とてもラッキーでしょう。

春はまた霞(かすみ)の季節でもあります。日差しがあっても空が白っぽいのは、大地がまだ草木で覆われておらず、細かいチリや花粉、場合によっては黄砂が舞っているためです。日中は、日差しによって温められた地面からの上昇気流でチリが舞いやすく、朝よりも昼の方が空が白っぽくなります。また、朝からいつも以上に空が白い時は、私の経験上、上空に寒気が入っていることが多い。文献ではその理由を説明した理論を読んだことがありませんが、水蒸気などが影響しているのかもしれません。上空に寒気が入ると、日差しとともに温められる地面との温度差が大きくなって、夕立型の天気の急変を生じることがあります。天気予報を見るのが一番ではありますが、いつも以上に空が白い時は傘を持ってもよいでしょう。

一方、穀雨の節気は、暦便覧では「春雨降りて 百穀を生化すればなり」と表現されています。田畑の準備が整って、まさにこの時期の雨は恵みの雨。雨がなければ穀物は育たず、雨が降るからこそ穀物が実る。京都でも神泉苑をはじめとして雨乞いの伝説が数多く残されてきました。山に囲まれた京都では、琵琶湖疏水が出来るまで水は貴重で、江戸時代の大規模火災の理由の一つに水の確保に苦労したことを挙げる学者もいるほどです。京都が水に不自由しなくなったのは、まだこの100年のこと。実は今年は京都の上水道が開通してから、ちょうど100年目に当たります。1912年4月1日に京都に初めて水道水が通りました。今は蛇口ひねれば簡単に使うことのできる水ですが、疏水を築いた先人たちには、感謝するばかりです。

穀雨の次の節気はもう「立夏」。近年では穀雨の頃から、最高気温が25℃を超える「夏日」が出始め、京都では昨日19日に今年初めて気温が25℃に達しました。つい1か月ほど前、最高気温が1ケタの日もあったのが遠い昔のようです。夏と冬には、真夏・真冬と「真」の言葉がつきますが、真春・真秋とはいいません。夏と冬は一年の中でも暑さと寒さのピークに当たるため、夏の中の夏、冬の中の冬との意味で「真」をつけるのかもしれませんね。あえて春についてもいうならば、夏と冬を相殺した京都の年間平均気温とほぼ同じ気候となるのが今時です。つまり、気温の上ではまさに今が「真春」。一方で、夏も近づく八十八夜は5月1日。立春から数えて88日目ということですが、各季節はおよそ90日程ですので、暦の上ではこれからが晩春です。桜も終わりに近づき、新緑が美しくなり始め、季節は歩みを速めるように「初夏」へと移り変わっていきます。

京都旅屋 1周年

4月20日で、京都旅屋を始めて1年が経ちました。まだまだ振り返るような段階ではありませんが、スタート時にまず1年間が区切りと考えてきましたので、散策に来て下さったお客様や、ここまで支えて下さった方々には、この機会に心から感謝をしたいと思います。本当にありがとうございます。様々なことがあった1年。ブログを毎日書くことは欠かさず続けていることの一つです。ちょうど1年前の今日、京都旅屋として初めて書いたブログの内容を改めて読み直してみました。初心忘れるべからず。1年経っても同じ文章を書けそうです。

ブログの最初の写真に選んだのは、御池大橋からの鴨川と空でした。実は昨年の9月頃から、行ける日は毎日写真を撮りに出かけています。もちろん今日も撮ってきました。季節によって空の特徴は変わり、同じ場所でも日々表情が違っています。いつかこうして積み重ねた京都の空の写真を使って、気象解説でもできたらと思います。ちなみに、昨年も今年も御池大橋からの写真には、納涼床の建設クレーンが写っていました。京都の夏の風物詩も5月1日から始まります。

さて、いずれにしても京都旅屋はまだまだこれから。ガイドも、企画も、講演も、執筆も、できることは何でも行わせていただきますので、是非お気軽にお問い合わせください。表現力を高め、勉強に励み、現地を歩き、日夜努力を続けながら、気象予報士の京都ガイドとして、長所を活かして多くの方のお役に立ちたいと思います。今後とも、ご声援をよろしくお願いいたします。

ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)

吉村 晋弥気象予報士として10年目。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。

「穀雨の京都 京都旅屋1周年」への4件のフィードバック

  1. 1周年おめでとうございます。京都の四季は本当に素晴らしいです。京都からの四季の美しい写真や動画、歴史や文化のお話をこれからも楽しみにしています。

    1. 抹茶さん
      いつもコメントありがとうございます。
      先日も京都へお越しいただき、ありがとうございました。
      四季折々に尽きない魅力を持った街が京都だと思いますので、
      今後もブログでどんどんご紹介していきます!
      ご声援、よろしくお願いします。

  2. 吉村さん、こんにちは。
    春の虹の話 興味深く読ませていただきました。
    そして、虹を一番多くみることができる季節は 
    秋かな?夏かな?と 思いをめぐらせてしまいました。
    2年目に突入ですね。がんばってください!

    1. さくらさん
      こんばんは。
      コメントありがとうございます。
      虹は雨上がりにはいつでも見られるようで、
      実は意外と珍しい部類の現象ですね。
      「虹の季節」はズバリ「秋」です!
      秋は特に晩秋に、雨が降ったり止んだりをする
      「時雨(しぐれ)」が起こりやすくなり、
      京都では「北山時雨」が古くから知られています。
      秋は真昼でも太陽の高さが低く、時雨の時には、
      太陽の反対側の「北」に虹が架かることもあります。
      夏や春だと太陽が低くなるのは朝と晩だけなので、
      必然的に「西」か「東」の空にしか虹は見えなくなります。
      また、冬で雪になってしまうと、虹そのものが見えなくなります。
      秋は、日の出は遅く、日の入りは早い分、
      普段出歩く時間帯に虹に出逢える確率も高くなるので、
      虹の季節は「秋」、特に「晩秋」だと私は思います。ご参考に。

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