前回は花菖蒲咲く西神苑の様子を書きました。西神苑と、飛び石のある中神苑は睡蓮の名所でもあり、午前中を中心に花を咲かせています。加えて黄色いコウホネも綺麗です。睡蓮は午後になると花を閉じ、翌朝になると開くため、まさに睡眠をとる蓮という意味から「睡蓮」と名付けられています。この日、私が訪れたのは夕方だったため、睡蓮は皆ウトウトしていました(笑)睡蓮目当ての方は午前中に行かれる方がよいでしょう。
東神苑まで来ると、まだサツキの花が咲いていました。正伝寺の記事でも書きましたが、京都はサツキの美しい社寺が多く、平安神宮の神苑もその一つです。池に映りこむ光景がまた美しいと個人的には感じます。この日は人もまばらで、広いお庭をまるで自分のお庭かのように歩くことができました。
東神苑の池はひと際大きく、個人的には池に映る空を毎回楽しみにしています。京都には数々の名庭がありますが、これほど大きな池が見られる場所は限られていて、他には仙洞御所や修学院離宮・桂離宮などの池もたいへん大きく、空が映りこんで私好みです。この日は曇り空から時折のぞく太陽が池に煌めいていました。
そして池にかかる泰平閣では、多くの方が座って池を眺めています。御所から移された建物にゆったりと座って歓談するのも平安神宮の楽しみ方の一つでしょう。無料開放の日にはもう大変な人混みとなりますが、普段は写真のように額縁のような風景の写真を撮ることもできます。私もしばし一服しながら、池を吹き抜ける風を感じてきました。
今は花菖蒲が見ごろとなっていますが、広い神苑には様々な種類の植物が植わり、四季折々に違った雰囲気を見せてくれます。池は琵琶湖疏水から水を引いていて、貴重な生き物も多く、スッポンなんかも時々見かけます。現在は浄化装置を通しているため、ブルーフギルやブラックバスという外来種が入りこまず、琵琶湖の生態系が保たれているそうです。自然を感じたい時には京都御苑と並んでお勧めのスポットですので、お時間があればゆっくりと回ってみて下さい。
ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。特技はお箏の演奏。