先日、神泉苑でサギ(鷺)の姿を見かけました。神泉苑はサギともゆかりがある場所です。
神泉苑は二条城の南に残る池で、現在は東寺が管理をする寺院となっています。池の中に突き出した善女竜王社は、弘法大師・空海ゆかりの雨乞いの社として信仰が厚く、赤い法成橋を渡って社に行く際に、願い事を一つ心の中で思いながら渡れば願いがかなうと人気を集めています。まだ善女竜王社の前の恵方社も、その年の恵方に向かって参拝できる年ごとに向きを変える社として知られています。
神泉苑は、もとは天皇のプライベートな苑池で、平安時代には今の10倍以上の広さがあったといいます。どんな日照りでも枯れることがない神の泉として神聖視され、たびたび雨乞いの儀式が修され、干ばつの時には一般の人々に水が解放されることもありました。そんな神泉苑はサギともゆかりがあります。
醍醐天皇の時代、天皇が神泉苑に行幸になったときにサギが羽を休めていました。すると天皇は家来にあのサギを捕らえてまいれと命じたのです。家来はサギを捕まえようと近づきますが、警戒をしたサギは飛び立とうとしました。その様子を見た家来は「宣旨ぞ(みかどの御意なるぞ)」とサギに呼びかけたところ、サギが動かなくなり、捕まえることができたのです。
家来が天皇のもとにサギを献上すると、天皇はサギが宣旨にしたがって自分のもとにやってきたことを大いに喜び、なんとサギに五位という高い位を授け、さらには「今日より後は鷺のなかの王たるべし」という札を首から掛けて放したと伝えられています。この時のサギが、ゴイサギ(五位鷺)です。ちなみにサギを捕まえた家来の位は六位で、サギのほうが位が高くなってしまうというのが面白いところです。
今回の写真のサギはゴイサギではなくアオサギですが、ゴイサギも境内には住み着いてるそうです。アオサギはちょうど善女竜王社の屋根に乗って普段はあまり見かけないポーズ(?)を見せ、まさに「鷺のなかの王」のような貫録がありました(アオサギですが)。こうして何気ない光景の中にも、面白い歴史物語を思い出させてくれるのが京都の街です。
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ガイドのご紹介
吉村 晋弥(よしむら しんや)
気象予報士として10年以上。第5回京都検定にて回の最年少で1級に合格。これまでに訪れた京都の観光スポットは400カ所以上。2011年秋は京都の紅葉約250カ所、2012年春は京都の桜約200カ所を巡る。自らの足で見て回ったものを紹介し、歴史だけでなくその日の天気も解説する。毎月第2水曜日にはKBS京都ラジオ「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」に出演中。特技はお箏の演奏。